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【深掘り】「法の番人」に失望広がる 国「終わった話」 デニー知事、次の一手見いだせず 辺野古代執行訴訟で沖縄県敗訴


【深掘り】「法の番人」に失望広がる 国「終わった話」 デニー知事、次の一手見いだせず 辺野古代執行訴訟で沖縄県敗訴 辺野古代執行訴訟の敗訴が確定したことを受け、記者団の質問に答える玉城デニー知事(右)=1日午後7時13分、県議会(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、大浦湾側の軟弱地盤改良工事に向けた沖縄防衛局の設計変更申請を巡る代執行訴訟は、最高裁が県の上告受理申し立てを不受理として、県の敗訴が確定した。県は、沖縄の苦難の歴史や過重な基地負担を負わされている不条理を踏まえた審理を求めていたが、地方自治法に基づく代執行訴訟で初の上告にもかかわらず沖縄の声を聞こうともしなかった「法の番人」への失望が、静かに広がっている。辺野古新基地問題の法廷闘争は、一つの大きな節目を迎えた。

 名護市辺野古の新基地建設問題を巡る代執行訴訟で、県の敗訴が確定した。法解釈の変更や、本来国民を救済するはずの行政不服審査制度を私人になりすまして利用するなど、異常な手法をとった国に加え、異例の代執行訴訟にもかかわらず県の主張を顧みなかった司法も「沖縄の不条理を置き去りにした」(県議の一人)と反発が広がる。一方、設計変更申請を新基地阻止の「切り札」としてきた県は、法廷闘争の主たる手段を失い次なる一手を見いだせずにいる。いちるの望みは政治に託される。

 「民事訴訟法318条の規定により不受理とする」

 1日午後2時すぎ、最高裁から届いた短い通知が、代理人を通じて県に届けられると、落胆の声が広がった。県関係者の1人は「中身は何も触れないのか」と憤った。

■苦悩

 県は、開会中の県議会2月定例会一般質問終了後に、最高裁の判断を議場で報告した。玉城デニー知事は敗訴を受け急きょ開いた会見で「何らの具体的判断も示さずに門前払いをしたことは極めて残念だ」と批判。「工事が続いていく以上、われわれは工事から目を離すことは絶対にしない」と強調し、引き続き、建設断念に向けて取り組む姿勢を示した。

 だが、切り札だった設計変更申請の承認が代執行された今となっては「具体的な打開策は見通せない」(県幹部)のが現状だ。

 県と国の間では現在も、大浦湾側のサンゴ移植を巡る訴訟や、県の不承認処分を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして県が処分の効力回復を求めた抗告訴訟も進むが、代執行訴訟での県敗訴は、残る2訴訟への影響もあり得る。

 中でもサンゴ訴訟は、設計変更が承認されていないことを前提としていたため、工事阻止への効果は薄れているとの見方もある。県幹部は訴訟継続については「知事判断だ」としつつも、今回の判決に「知事は納得できない部分があるだろう」と代弁した。

■力

 勝訴を見込んでいた防衛省は判決が確定するのを待たず、大浦湾側の工事に着手していた。代執行に踏み切った時点で決着をした「終わった話」(政府関係者)として工事を推進する構えだ。防衛省関係者は「淡々と進めるだけだ」と語った。

 こうした状況は6月の県議選や、次期衆院選など今後の県内政局への影響も避けられない。

 県政野党・自民県議は「目に見える形で工事が進む一方、知事公約の建設阻止は難しいと県民も諦めていくだろう。今後は、沖縄の将来に何を残せるかが問われることになる」として、政府とのパイプを生かした振興策による支持拡大に自信をのぞかせた。

 一方、与党県議は「厳しい判断は予想された」と冷静に受け止めた。「法律の解釈を好き放題に変え、私人になりすまし、司法も実質審理しないという、沖縄の不条理に憤りを感じない県民はいない」と強調。知事選挙や国政選挙など主要選挙で勝利した「オール沖縄」を支える民意こそが「沖縄の不条理を変えていく力だ」と訴える。

 玉城知事も「不条理を見て見ぬふりはできない」と強調。国に対して対話による解決を訴えていくと同時に、トークキャラバンの開催などで県外で沖縄の基地負担や辺野古新基地建設問題などを発信し、民意の拡大に努める考えを示した。

 (知念征尚、佐野真慈、明真南斗)