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【深掘り】ロウワー・プラザ緑地開放、返還なき「負担軽減」の演出 フェンスそのまま、規制は強化・拡大 県側「お茶濁し感強い」 


【深掘り】ロウワー・プラザ緑地開放、返還なき「負担軽減」の演出 フェンスそのまま、規制は強化・拡大 県側「お茶濁し感強い」  テープカットする林芳正官房長官(左から3人目)ら関係者=30日、米軍キャンプ瑞慶覧のロウワー・プラザ緑地ひろば(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 防衛省は、米軍キャンプ瑞慶覧の一部であるロウワー・プラザ住宅地区の住宅を取り壊した上で「緑地ひろば」として開放した。返還前の米軍施設を緑地として一般開放する新たな試みで、防衛省は基地負担軽減に向け「新しい道を開いた」(同省関係者)と意義付ける。だが、地域の発展につながる返還時期は不透明なままだ。

 「沖縄の基地負担軽減の目に見える成果の一つだ」。あいさつに立った林芳正官房長官は、ロウワー・プラザ住宅地区を緑地ひろばとして開放する意義をこう強調した。

 返還前使用は岸田首相の「目玉」

 同地区は元々米軍の住宅地で、2013年に日米両政府が合意した嘉手納より南の統合計画に基づき、キャンプ瑞慶覧内に住宅102戸を整備することを条件に「24年度またはその後」の返還が約束されている。

 一方、22年の復帰50年に合わせた記念式典で、岸田文雄首相の来県時に「目玉」として発表したのが、返還前に日米共同使用として一般開放する今回の計画で、基地負担軽減を演出する。

 防衛省が管理する広場の事例は過去になく、防衛省関係者は「初めての事例で苦労も多かったが、成功事例として今後につなげたい」と語る。土地所有者からも返還前から対象となる土地での調査や測量を実施できる可能性が高まるとして期待の声は大きいという。

 住宅解体は終了し居住者はいない。それでも未返還なのは、返還条件の住宅102戸の建設が完了していないためだという。防衛省担当者は「米側からすると、あくまで約束事が大前提だ」と説明。正式な返還時期のめどは示していない。

 前日には特定重要施設に指定

 華々しいセレモニーで負担軽減をアピールしたが、日米共同使用の形をとった「米軍専用施設」との位置付けは変わらない。今も金網に囲まれたままだ。

 式典に先立つ29日、政府は安全保障上重要とする土地を対象とした「土地利用規制法」の対象施設を発表した。同地区を「特定重要施設」に指定し、周囲を土地取引の際に事前届け出が必要となるなど規制の度合いが高い「特別注視区域」に区分した。

 同法を所管する内閣府は米軍と調整した上での指定だとし、同地区はキャンプ瑞慶覧と「米軍の部隊運用上、一体となってその役割・機能を果たしており、全体として基本方針に定められている機能を担っている」と指定理由を説明した。

 県は、緑地ひろばは防衛基盤に当たるとは考えられないとして指定見直しを求めていたが、国は変えなかった。

 軍事施設としての影が色濃く残る中での「一般開放」に、県幹部の一人は「基地負担の軽減に向け、米側との交渉の中でできるだけ努力をしていると見せる意味があるのだろう」と背景を読み解いた。同幹部は「お茶濁し感が強い。もっと大胆に負担軽減をみせるべきだ」と指摘した。別の県関係者は「住宅地区自体の返還時期が見通せないのが問題だ」と語る。地域の発展にも密接に関わる返還の遅れに懸念を示した。

(知念征尚、明真南斗)