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【深掘り】外国人の不動産投資に冷や水も 基地返還予定地、ゴルフ場も対象に 土地規制法の区域指定 沖縄


【深掘り】外国人の不動産投資に冷や水も 基地返還予定地、ゴルフ場も対象に 土地規制法の区域指定 沖縄 米軍嘉手納基地(写真奥)に囲まれ、土地利用規制法で全域が「特別注視区域」となる嘉手納町の民間地=2010年4月(上空から撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府が安全保障上重要とする土地の利用状況を調査、規制する土地利用規制法に関連し、県内で新たに規制対象となる見込みとなった区域が波紋を呼んでいる。米軍基地を除く行政区域のほぼ全域が、一定面積以上の土地取引時に事前届出が義務付けられる「特別注視区域」に指定されることが判明した嘉手納、北谷町など、もともと基地負担が集中する地域で、私権制限を伴う規制の網が掛けられることが鮮明になった。軍事上「重要」とは言えない施設の周囲にも特別注視区域が広がっていることも明らかになり議論を呼びそうだ。

 今回、対象区域として挙げられたのは米軍基地や自衛隊施設など31区域44施設。政府は地図を公表していないが、規制の度合いが強い特別注視区域を中心に、中南部地域に集中する。

 県経済はリーディング産業の観光が好調で、不動産投資も活況を呈するが、規制法はそうした景気に冷や水を浴びせかねないと懸念されている。

 OK不動産(那覇市)の照屋健吉社長は、外国人による不動産取引に影響を及ぼすとみる。香港の投資家などが、将来的な不安から日本・沖縄に投資先を探しているとして「北谷町宮城の外人住宅などに興味を持っている。外国人であることを理由にことさら調べられるとなれば、投資意欲を抑止しかねない」と指摘した。

 規制法の調査対象に国籍の区分はない。ただ外国人による土地取引に対する警戒感が背景となった法成立の経緯から、外国人を対象に調査される可能性が指摘されている。

 北谷町役場によると、規制適用前だが不動産会社から2件の問い合わせがあった。土地利用に制限があるかどうかの質問や、土地取引に影響が出ないか懸念する内容だったという。町担当者は「実際に法の運用が始まったら、問い合わせが増えるかもしれない」と警戒した。

 県が指定を疑問視する施設がある。沖縄市とうるま市にまたがる米軍保養施設「タイヨーゴルフコース」や、キャンプ瑞慶覧の一部で、返還前に緑地公園として近く一般利用が始まるロウワー・プラザ地区の周囲も特別注視区域とされているためだ。

 国は特別注視区域の対象として指揮中枢機能や司令部機能がある施設などを例示している。法案審査段階では規制措置について「必要最小限度となるよう適切に運用する」(2021年6月、当時の小此木八郎領土問題担当相)と説明していた経緯もある。

 タイヨーゴルフコースはもともと、日本人客の利用が常態化し「民業圧迫」だと関係団体が是正を求めていた施設でもある。県はタイヨーゴルフコースなど2施設の周辺について「到底、必要最小限のものとは言えない」として区域の見直しを強く求めた。

 内閣府幹部は「県の意見の内容や具体的にどの区域を指定しているかという点については、国と県で率直に意見交換する。具体的な内容は差し控える」とした。

 (知念征尚、沖田有吾、石井恵理菜、安里洋輔)