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【深掘り】米司令官が表明の「フォーラム」が波紋 米兵事件の再発防止 既存の枠組みは活用されず 沖縄


【深掘り】米司令官が表明の「フォーラム」が波紋 米兵事件の再発防止 既存の枠組みは活用されず 沖縄 相次ぐ事件を受け、街中をパトロールする米海兵隊員=7月、金武町(米軍サイト「dvids」より)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 相次ぐ米兵性的暴行事件を受け、在日米軍司令官のリッキー・ラップ中将が22日に発表した声明が波紋を呼んでいる。在日米軍指導層や県、地域住民による新たな協議の枠組み「フォーラム」を創設する考えを示したが、構成員に挙げられた県には、23日も詳細は伝えられないままだ。事件事故の再発防止に向けた既存の枠組みが活用されない中、新たに米側が打ち出した地元警察との共同パトロール実施についても、カウンターパートとなる県警側には、逮捕時の身柄が米側に奪われかねないとの警戒感が横たわり、先行きは不透明だ。

 米軍関係者による事件防止を図る枠組みとしては「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキング・チーム」(CWT)がある。外務省沖縄事務所が事務局を務め、米軍や在沖米総領事、県、市町村、沖縄防衛局などが構成員となる。おおむね毎年開かれていたが、2017年を最後に途絶えた。県は早期開催を呼びかけてきたが、関係者によると、米側の都合で開催がかなっていない。

 今回米軍が創設するとした「フォーラム」については構成や議題、時期なども未定だ。県にも詳細は伝えられていないが、日本政府と米軍はやりとりをしているという。外務省は「米軍と話しているが、詳細については今後詰めていく」と答えた。CWTとの違いについは「現時点で決まっていることはない」と述べるにとどめた。ただ、CWTとは別の枠組みをつくることだけが決まっている。米軍としてCWTを回避したい事情がある可能性も浮かぶ。

 3日に東京都で関係機関などを回って抗議した玉城デニー知事は終了後、記者団の取材に応じ「米側は、その場(CWT)が抗議の場になっては困るという印象を持っていると思う」「さまざまな人に話を聞いてみると、どうも米側の腰が重いというような話が聞こえてくる」などと語っていた。

 ラップ氏は22日に示した声明で、新たな枠組みを設ける目的として「建設的な意見交換の場」と強調した。だが、日本政府や米軍は現時点でCWTとの違いや別で設ける理由を明確に説明していない。CWTについて開催が滞ってきた背景についてうやむやにすれば、新たな枠組みを設けても再発防止につながるかどうか不透明だ。

 国政野党からは新たな枠組みの設置に時間をかけるよりも「(既存の)CWTで早期に取り組むべきだ」(屋良朝博衆院議員)との声も上がる。

 県関係者の一人は、広がる反発に「何らかやっている感を出さないと『まずい』とは思っているのだろう」と米側の取り組みに理解を示しつつも「なぜCWTから変える必要があるのか。立て付け自体がどうなるか分からず、判断のしようがない」と疑問視した。

 (知念征尚、明真南斗)