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沖縄でマリンレジャー事故多発 観光客が半数、目立つ50代以上 奥武島では中学生が2年連続事故<沖縄DEEP探る>


沖縄でマリンレジャー事故多発 観光客が半数、目立つ50代以上 奥武島では中学生が2年連続事故<沖縄DEEP探る> 中学生が溺れて心肺停止の状態で搬送される事故があった海=5月17日、南城市の奥武島
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 県内の海で、遊泳やシュノーケリングなどのマリンレジャーでの事故が多発している。第11管区海上保安本部によると、今年のマリンレジャーに伴う人身事故は5月29日時点で26人と、前年同期比で6人多く23年の年間事故者数を上回る勢いだ。そのうち観光客が5割を占め、50代以上の中高年層の多さも目立つ。一方、5月17日には奥武島で中学生が溺れて心肺停止の状態で搬送されるなど、若い世代の事故も発生している。事故現場から対策を求める声も上がる中、11管や海の見守りの専門家が事故を未然に防ぐ知識の拡充を呼びかけている。

 ■重大事故に

 11管交通安全対策課の小坂和彦課長は「(陸上での)交通事故と比べ、海の事故は件数が少ないが、遭ってしまうと重大な事故につながることが多い」と指摘。遊泳中の事故については、「ライフジャケットなど浮具を正しく着用すること、救助体制の整った海水浴場で遊ぶことが大原則だ」と強調する。

 11管によると、今年の県内でのマリンレジャーに伴う人身事故は5月29日時点で26人(前年同期比6人増)。人身事故は21年(76人)、22年(80人)、23年(93人)と年々増えている。事故増加の要因は、コロナ禍の行動規制が緩和され、国内外から観光客が県内に流入したことなどとみられ、事故者26人のうち観光客は14人と54%を占める。死亡者をみても、6人中5人が観光客だった。

 また、持病や体力が低下する傾向にある50歳以上の中高年層も11人と、事故者全体の42%に上る。5月7日には、石垣市のマエサトビーチで浮き輪を抱えシュノーケリング中だった女性(70)=東京都=が溺れて病院に搬送され、その後死亡が確認された。26日にも、恩納村の通称・青の洞窟でガイドの管理下でダイビング中だった女性(50)=東京都=が意識不明の状態で搬送後、死亡している。

 一方、県内の若年層が事故に遭うケースも目立つ。17日には南城市の奥武漁港付近で、堤防から海に飛び込んで遊んでいた男子中学生が溺れ、心肺停止の状態で病院に搬送された。付近の海域では23年6月にも、女子中学生が遊泳中に溺れて死亡する事故があった。

 奥武島で2年連続して中学生の事故が起きたことを受け、与那原署や中城海上保安部、漁協などによる与那原地区水難事故防止推進協議会は5月24日、与那原町で臨時会を開催した。与那原署の安里真全署長は「地区の皆さまと連携を強化し、水難事故防止に向けた取り組みを強化する」との方針を示した。

 ■対策急いで

 5月17日の奥武島での事故を巡っては、漁業関係者や地域住民からも危機感を募らせる声が上がっている。海底に潜って男子中学生を発見し、救助した漁師の新垣隆也さん(40)は「毎年同じように若い子が事故に遭うと、助ける方もつらくなる」と肩を落とす。地域住民の40代男性は「今の救助体制では海人(うみんちゅ)任せになっていないか」と行政の対応の遅れを指摘。「一日でも早く対応できるよう、漁港付近にサイレンが鳴るブザーを設置するなど、今ある技術を使って対策を急いでほしい」と語気を強めた。

 新垣さんの同僚の30代男性は「目の前で友だちが溺れているのを目にした子どもたちはパニック状態になる。自分たちを責めずに大声で叫んで大人に知らせてほしい」と語る。また、「事故が続いている場所は奥武島以外にもあるので、県をあげて教育現場などで啓発を推進してほしい」と要望した。

 ■「三つの知る」

 沖縄ライフセービング協会の音野太志代表理事(48)は「ダイビングをする観光客は、長時間の移動や前夜の飲酒などで疲労がたまった状態で入水するケースがある。持病がなくても水圧で体に大きな負担が掛かるので、ゆっくりとしたスケジュールを立ててほしい」と呼びかける。また中学生が溺れた奥武島付近の海域については、「岸からの傾斜が急で、潮の干満によっては水深もかなり深くなる」と指摘。その上で、(1)泳力の限界など自分の能力を知る(2)水深や流れ、風など自分が関わる環境を知る(3)自分がしようとしている行為を知る―の「三つの知る」が重要だとした。

  (西田悠)

 県内のビーチの危険情報や過去の水難事故の情報はポータルサイト「おきなわマリンセーフティポータル」内の「おきなわマリンセーフティマップ」で確認できる。