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医療新制度 人材確保に課題 宮里達也氏(県医師会副会長)<識者の視点・沖縄県議選2024>(4)


医療新制度 人材確保に課題 宮里達也氏(県医師会副会長)<識者の視点・沖縄県議選2024>(4) 宮里達也氏(県医師会副会長)
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 ―少子高齢化が進む中、今後起こりえる沖縄の医療の課題は。
 「昨今、医師や看護師不足が盛んに言われているが、実はそれ以前に薬剤師や作業療法士らさまざまな専門分野の人材が不足している。へき地・離島を多く抱える沖縄では人材確保は容易ではない。このため多くの病院で病床はあっても、稼働できていない状況が普通にある。そして国の新制度『地域包括医療病棟』によって専門職の取り合いが始まり、人手不足がさらに顕著になる。県議選では制度の激変にどう対応するか議論を深めると同時に、議会を通して島しょ県の医療課題を県民へ周知してほしい」

 「病院は基準病床数が定められており、勝手に増床することはできない。こういう制度がある中、国は高齢者の緊急搬送の増加を受けて、2024年度から『患者1人当たりに専門人材をそれぞれ何人』といった基準を設けた『地域包括医療病棟』の導入を打ち出した。高齢者の急性期の疾患に対して看護師による手厚い病院治療体制ではなくて、介護士等の他の職種を増やして在宅復帰を促す制度だ。これをクリアできなければ、適正な医療費が得られない仕組みとなる」

 ―急な制度変更には対応しにくいか。
 「高齢化が進む中、新制度の方向性は間違ってはいない。ただ突然言われてもすぐに多くの専門職を県内各病院で採用することはできない。特に県立病院は経営的制約が多く人的流動性が低いこともあり病床転換は容易ではない。民間病院でも人口密集地の中南部は何とかなるかもしれないが、元々人口減少が進む北部や先島はさらに厳しくなる。県立病院の経営に影響が出る可能性がある。病床が維持できなくなり、主に過疎地域の患者には過度な負担が掛かる恐れがある」

 ―対策は。
 「近年、頻繁になされている国の制度改変は大都市中心の制度設計となっている。本県のような島しょ県は医療資源が乏しいため多くの専門職確保が難しく、さまざまな困難が発生すると思う。県議候補は医療経営の視点も持ち、全県的に段階的措置の導入を国に求めるように動いてほしい」