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日米の通報手続きが機能せず 沖縄県、伝達経路の整理を訴え 米兵少女暴行事件


日米の通報手続きが機能せず 沖縄県、伝達経路の整理を訴え 米兵少女暴行事件 沖縄県庁(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米兵少女暴行事件を巡り、捜査機関と外務省の間では情報共有されていたが、県などには伝わっていなかったことが問題となっている。1997年に日米が合意した事件・事故の通報手続きが機能していなかったことが浮き彫りになった。県は情報の伝達経路を整理する必要性を指摘している。


 97年に日米が合意した「在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続」は、大使館や米軍から日本政府の機関同士で共有し、沖縄防衛局を通じて県や市町村に通報することを定める。

 だが、今回の事件はこの手続きに沿って情報が共有されておらず、県が事件を認識したのは25日の報道が最初だった。

 外務省は本紙の取材に「全てのことについて直ちに共有すべきということではない」と回答。通報対象とならない事案もあることを明らかにした。今回の事件については、検察当局が発表していないことを踏まえ、通報手続きに沿わなかったと説明。情報の共有範囲は「捜査機関が決めることだ」と強調した。

 「通報手続」は「在日米軍に係る事件・事故の発生についての情報を、日本側関係当局及び地域社会に対して正確にかつ直ちに提供することが重要」とうたうが、通報対象から除外する条件などは明記されていない。日米政府の恣意的(しいてき)な判断で通報しないことも可能ということになり、形骸化が懸念される。

 防衛省は「基本的には事件事故があれば手続きに沿って通報されるが、個別事案に応じた判断で対象とならない場合もある」とするが、今回の判断には言及を避けた。起訴を知らなかったのか、知っていて県に通知していなかったのかを明らかにしていない。

 一方、那覇地検や県警からも県に情報は提供されていなかった。那覇地検は「性犯罪という事案の性質や被害者のプライバシー保護の観点に鑑みてこれまで広報を差し控えてきた」と語った。県警は「あくまでも捜査機関なので、詳細を他機関に報告はできない」と答えた。そもそも地検や県警から捜査の目的を超えて県に通報する経路や連絡網は定められていないという。

 県は、米軍関係者による飲酒運転や住居侵入などの事案が発生した場合には、防衛局などから情報共有を受けた上で関係機関に申し入れを実施してきた。

 県関係者は基本的には、通報手続きにのっとって情報提供されるべきだとの認識を示す。捜査機関などの説明に「性犯罪やプライバシーに配慮する必要はあるが、再発防止の観点も重要だ」と強調した。「個人情報を必要としているわけではない」と指摘し、説明の在り方を重ねて疑問視した。

 (明真南斗、知念征尚)