10日に縦覧が始まった環境影響配慮書では、事前の文献調査結果として工事実施箇所やその周辺で、環境省レッドリストに登録された絶滅危惧IA類など重要な動物だけで214種が生息している可能性があるとされた。このうち、海域の動物を中心に延べ131種が事業実施想定区域内に主な生息域があり「生息環境への影響が生じる可能性がある」と記述された。87種類の重要な植物も生育している可能性がある。那覇軍港の移設事業は、造成工事により直接海底が改編され、潮流の変化などにより間接的な影響を与える可能性がある。
動物関連では「環境省版海洋生物レッドリスト2017」で絶滅危惧Ⅱ類となったヒユサンゴが分布している可能性が報告された。サンゴの生息域と軍港や民港の埋め立て区域は一部重なり、環境保全策が課題となる。
配慮書に掲載された専門家へのヒアリング結果では、当該区域のサンゴの被度が近年高くなっていることが指摘された。
八重山地方に比べてサンゴの白化現象の事例が少なく「最近は八重山地方よりも沖縄本島の方がサンゴの被度、多様性が高くなってきている」と記述され、海域の希少性を浮き彫りにした。
配慮書に示されたよりも多くの生物が確認される可能性もあるといい、十分な調査が求められる。また、生態系でみると沿岸部に比較的大規模な海草藻場が分布しており、地下水を通じて栄養が供給されている可能性もあるという。米軍キャンプ・キンザー内では地下水の調査ができていない課題も挙げられ、文献資料や聞き取りを含む調査を広げることを求める声もあった。
(知念征尚)