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【記者解説】米兵事件の情報共有で外相「配慮」発言 薄い危機意識、問題と乖離した再発防止策の過去も


【記者解説】米兵事件の情報共有で外相「配慮」発言 薄い危機意識、問題と乖離した再発防止策の過去も 参院外交防衛委の閉会中審査で答弁する上川外相=30日午後
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 外務省が米軍関係事件に関する情報共有の在り方について見直しを示唆しているのは、地元への情報伝達について同省の対応に批判が集中していることがある。現状を改善するのではなく、現状に合わせてルールを変えるのは政府の常套(じょうとう)手段だ。情報の共有範囲を狭めることになるのであれば、今回の対応が批判を招いていることへの対処として筋道が立たない。 

 プライバシーに配慮しつつ関係機関に発生を知らせ、注意喚起することは可能だ。そもそも1997年に日米合同委で通報手続きを合意した背景の一つに、95年の少女乱暴事件があった。現行手続きが刑事事件にそぐわないのであれば、97年合意は対応策になっていなかったことになり、検証が必要だ。

 外相自身が通報手続きの詳細を把握できていなかったことは、97年合意への認識や事件に対する危機感が政府内で薄れていることを表している。

 日米両政府が問題と乖離(かいり)した再発防止策を掲げたことはこれまでもあった。2016年の米軍属による女性暴行殺人事件後に打ち出した「地域安全パトロール隊」(通称・青パト)も大半が泥酔者対応となっている。

 今回、米軍が示した再発防止策も実効性は不透明だ。在日米軍が日本側と協議する新たな枠組みとしているフォーラムについて、衆院安全保障委員会で上川外相は事件事故の再発防止に限った協議の場ではないことを明かした。県関係者は「当初目的と違うものができあがっては困る」と警戒感を示す。

 昨年12月の米兵少女誘拐暴行事件の発生から半年以上が経過する中、地元の懸念に真摯(しんし)に向き合う姿勢が求められている。 

(明真南斗、知念征尚)