昨年12月と今年5月の米兵性的暴行事件について、首相官邸には情報が入っていた一方、防衛省は事件が報道で明るみになるまで把握していなかったことが10日、分かった。
参院外交防衛委員会の理事懇談会が開かれ、防衛省担当者が明らかにした。1997年に日米が合意した通報手続きで定められた米側から日本側への通報もなかった。地元に通知する役割の防衛省に情報共有されず、県や市町村への通報経路が機能していなかった。
97年の通報手続きでは米軍は沖縄防衛局に、在日米大使館は外務省に事件を伝達することになっているが、伝えていなかった。防衛局には事件が公になるまで米軍からも通報はなかった。外務省にも積極的な通報はなく、外務省が把握した後で大使館との情報共有が始まった。外務省が初めて事件を把握したのは捜査当局からの情報だった。
理事懇談会に出席した議員によると、米軍や大使館からの通報がなかったことについて、日本政府から抗議していないとの説明があった。野党側から「防衛省はかやの外」(立民・小西洋之氏)などと批判の声が上がった。
衆院沖縄北方特別委員会も10日、非公開で理事懇談会を開き、相次ぐ米兵性的暴行事件について政府から聞き取りした。出席議員によると、外務省担当者は被害者のプライバシー保護などを理由に情報共有を控える措置をとったのは「昨年12月の事件から」と説明した。運用変更の理由は明確にしなかったという。
出席した複数の議員によると、両理事懇談会では与野党を超えて通報手続きの運用について問題視する声が上がった。
参院外交防衛委員会では野党が閉会中審査の開催を要求する考えで一致しており、与党の一部も賛同している。7月中に開催する方向で調整する。
衆院沖縄北方特別委員会でも野党側から閉会中審査の開催を求める声が上がっており、今後協議する。
(明真南斗、嘉数陽)