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【識者】新しい安保政策、沖縄から発信を 沖国大ヘリ墜落20年 前泊博盛氏(沖縄国際大教授)


【識者】新しい安保政策、沖縄から発信を 沖国大ヘリ墜落20年 前泊博盛氏(沖縄国際大教授) 前泊博盛氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄の脱基地の本気度が問われた20年間だった。SACO合意を本気で実現しようとする政治家を育てられなかったつけが出て、むしろ状況は悪化している。

 墜落事故では、民間地なのに米軍に封鎖されるという屈辱的な対応を受けた。いまだに日米地位協定を改定できず、アメリカの特権を崩せていない。普天間第二小にヘリの窓が落下した後、官邸が米軍に小学校の上を飛ばないように要請しても無視された。きれいな水も有機フッ素化合物(PFAS)に汚染され、改善も実態の調査もさせてもらえない。何度も事故を起こして構造上の原因があると分かっているオスプレイに上空を飛ばれている。爆音は相変わらずだが、司法は飛行を差し止めることができない。普天間は、日本の主権のありさまを知らしめる場となっている。

 橋本龍太郎元首相がSACO合意にこぎ着けたのは、大田昌秀元知事が県内の全ての米軍基地を返還させるという基地返還アクションプログラムを策定して、本気で迫ったからだ。沖縄の怒りを静め、嘉手納基地を守るために普天間を含む11施設の返還に動いた。今、県知事には大田元知事のようなカードを持つことが求められる。基地を認めながら辺野古だけノーと言っても、本気度は伝わらない。

 今後は鳥の目で全体を俯瞰(ふかん)することが必要だ。EUのような経済圏をアジアにつくり出すことが平和への近道だ。軍事による安全保障という古い発想を抜け出し、国境を越えたネットワークを構築し新しい安全保障政策を沖縄から発信していくことが求められる。

  (安全保障論、談)