米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は21日、県に対し、事故を受け停止していた同市の安和桟橋からの土砂搬出を22日から再開すると通知した。6月28日の事故発生から2カ月がたとうとしているが、県が行政指導で防衛局に求めた安全対策は今も示されていない。協議がないまま一方的な再開通知に県は「見切り発車」(玉城デニー知事)だと反発している。
事故発生直後の7月初旬、県は防衛局に対して行政指導を実施した。(1)事故原因の究明(2)再開にあたっての安全対策の実施と県への説明(3)安全対策が講じられるまでの運搬作業の中止―の3点を文書で求めた。
しかし、防衛局側からの反応はないまま、時間は経過した。
県の指導から1カ月以上がたった8月15日、防衛局は県に対して安全対策の実施を要請。県からの要請には対応せず、一方的に安全対策を押しつける姿勢に、県関係者は「県の指導に対応がないまま一方的に要請を行うのはおかしい」と批判した。
事故の影響で安和桟橋と本部港塩川地区からの搬出が止まった影響で、辺野古では海上ヤードの工事が止まるなど影響が出ているといい、防衛局は対応を急いでいるとみられる。
一方、防衛局が要請した、ガードレールの設置や、トラックの出入りが「妨害」されることのないよう、県も呼び掛けるよう求める内容にも、県庁内では反発が広がる。
ガードレールについては歩道をふさぐ形の設置となるため「(人が歩く)歩道本来の機能を果たせなくなる」(県関係者)として設置は難しいとの見方が強い。玉城知事も21日、記者団に対して「歩行者優先」だと強調し「歩行者が歩道を歩くことを制限することは法律上できない」と話した。
県土木建築部幹部は「作業に関する安全対策は事業者が行うのは当たり前だ」と指摘する。関係者の一人は道路沿いで建築物を建てる際の安全対策は、管理者である行政ではなく事業者が実施するものだと説明。県に対策を求めた防衛局の姿勢を疑問視した。
防衛局は、道路や港湾管理者としての県に抗議行動への対応を求めたにも関わらず、管理者の県の指導に従わず一方的に搬出を再開することにもなる。防衛局の対応は“二重基準”が際立つ。
県は7月に送付した文書で防衛局の説明を聞き、互いに意見交換を行う姿勢だった。県は安全対策について協議をする上で「防衛局がどういう対策をとるのかが分からないと、県としても何が出来るのか検討できない」と指摘した。
(知念征尚、與那原采恵、明真南斗)