沖縄県の玉城デニー知事の訪米に関し、国際政治学者の我部(がべ)政明・琉球大名誉教授が13日までにインタビューに応じた。玉城氏は8~14日の日程で訪米、米兵による性的暴行事件が6月以降相次いで発覚したのを受け、米軍基地が集中する問題を政府や大学関係者らに直接訴えた。我部氏は、沖縄問題への米国内の関心は低いとし、11月に迫る大統領選も念頭に、米国民に当事者意識を持ってもらう発信が重要だと指摘した。
―大統領選が近い。
「国民のリーダーを決める選挙の性質上、社会保障や移民政策など有権者に響く国内問題が争点化しやすい。外交や安全保障は二の次だ。一方、日本製鉄のUSスチール買収計画のように、国際問題でも国内情勢に大きな影響を及ぼす場合なら一気に関心が高まる」
―沖縄では米兵の事件が相次いで発覚した。
「米国内でも、女性兵士への暴行など軍内部での性犯罪が近年問題化している。沖縄の事件に対して『対岸の出来事ではなく、米国人自身に関わる人権問題』との認識が広まる可能性はある。沖縄に寄り添う動きへ発展するかもしれない」
―米国から見た沖縄基地問題に対する意識は。
「東アジア地域の安定化だけでなく、軍にとって制約が少なく使いやすい基地という意味で都合の良い存在だ。基地に対する抗議や、米軍に特権的地位を認める日米地位協定の改定を求める声は疎ましいのが本音だろう。米国内には『日本の国内問題でわれわれは当事者ではない』との意識がある。県が反対する(米軍)普天間飛行場の名護市辺野古移設への受け止めもそうだろう」
―大統領選の結果が沖縄に与える影響は。
「民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領のどちらが当選しても大きな変化は見込めない。ハリス氏はバイデン大統領の路線を継承し、日米同盟を維持、増強するだろう」
「トランプ氏は予測不能な動きをすることがある。『沖縄の知事が首都に来たら会おうか』などと、偶発的な言動が基地問題を動かす可能性は否定できない。ただ外交政策ではシンクタンクや軍、官僚の影響力が岩盤のように強く、大統領でも簡単には変えられない」
―知事が訪米した。
「基地の負担は過重なのに、47都道府県の1県に過ぎない沖縄の訴えは本土に届きにくい。(県と立場の異なる)日本政府による代弁がかなわない現状で、沖縄の代表が米政府や研究機関へ直に伝える意味はある。理解の促進に向け、地道に種をまく活動は大切だ」
(共同通信)