prime

【深掘り】日米地位協定の改定、実現性は 石破新総裁 選挙の顔に自民期待 


【深掘り】日米地位協定の改定、実現性は 石破新総裁 選挙の顔に自民期待  普天間飛行場の辺野古移設方針について会見する自民党の石破茂幹事長(左)と同党の県選出・出身国会議員=2013年11月25日、自民党本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党総裁に選ばれた石破茂氏。候補者の中でただ一人、日米地位協定について「改定に着手すべき」だと打ち出した。一方、党幹事長時代の2013年には県選出・出身の国会議員に名護市辺野古の新基地建設を容認させた強権姿勢が強い印象も残した。近く解散・総選挙が見込まれる中、期待と不安が交錯したまま、10月1日の首相指名を迎える。

 17日に那覇市で開かれた総裁選立候補者演説会で協定改正に言及した石破氏。防衛庁長官時代の04年の沖国大ヘリ墜落事故で県警の捜査権が及ばなかった点などを挙げ「これが主権国家なのか。地位協定改定に着手すべきだ」と強い意欲を示していた。

 協定については「運用改善」が従来の日本政府の姿勢だ。政府関係者の一人は「総裁選候補として話すことも重要だが、首相になったら首相としての立場もあるのではないか」と政府方針の踏襲を言外に期待する。

 別の政府関係者によると、石破氏は政府内の役職に就いていない時期にも協定改定を念頭に外務省や防衛省に水面下で課題などを検討させていた。基地管理権を日本側が持つことに焦点を当てていたというが、結実していない。

 県関係者は「協定改定にはよほど腰を据えて取り組まないといけない。県としても、具体的な改正案を示すなど働き掛けを強める必要がある」と語った。

 23日には、野党第1党の立憲民主党新代表に野田佳彦氏が選出された。ともにトップが固まり、今後は解散・総選挙に政局の場面は移る。

 石破氏は自民党内でも論客として知られ、国民人気も高い。総裁選の県内党員投票でも最多得票だった。自民県議の一人は「石破氏の人気と協定改定を前面に出して選挙戦を戦える。県議選以上の勢いを得られる」と自信をのぞかせた。

 一方で、石破氏は幹事長時代、県選出・出身国会議員に辺野古新基地建設を容認させた経緯がある。辺野古移設に反対が根強い県内で批判を呼んだ。

 別の自民県議は石破氏が選挙の顔となることに「県民の中には当時の記憶がある」として不安ものぞかせた。

 県政与党幹部は石破氏が訴える協定改定について「全てにおいて国内法を適用しない限り、石破氏の言う『主権国家』とは言えない」とくぎを刺した。

 別の与党幹部は「県民はすぐに県選出議員を権力でねじ伏せた『平成の琉球処分』が思い浮かぶはずだ。衆院選で自民の勢いが増すとは限らない」と見通した。

 (知念征尚、明真南斗、佐野真慈)