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止まらない地価高騰「若者は住めない街に…」 米軍向けから需要変化 移住者、別荘、海外の富裕層投資も<ニライの都市へ 北谷・振興計画50年>5


止まらない地価高騰「若者は住めない街に…」 米軍向けから需要変化 移住者、別荘、海外の富裕層投資も<ニライの都市へ 北谷・振興計画50年>5 北谷町美浜に立ち並ぶビル=16日(喜瀬守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 石井 恵理菜

 「住みたいけど住めない街になっている。若い世代の流出が本当に痛手なんです」

 そう語るのは、アメリカンビレッジに隣接する北谷町美浜区自治会の岡村悦子会長だ。美浜区に31年前にできた「美浜ハイツ」は、入居時に子どもだった世代の大半が町外に移り住んでおり、親世代の高齢化が進んでいる。

 観光地として発展し、子育て施策が充実しているなどの理由で住みたい街として人気が高い北谷町。一方、地価が高騰し若い世代が住めない街になりつつある。

 北谷町で生まれ育った女性(30)は、第2子の出産を機に沖縄市内で一軒家を購入した。北谷で物件を探したが、金額的にも物件の少なさからも断念。「友人たちも家の購入を機に北谷から出て行く。親が土地を持っていない限り、自分たちで北谷に家を建てるのは到底無理だ」と話す。「子育て支援が充実していたので正直残念だ」

 県の2023年の地価調査によると、字北谷の基準地価は坪68万円で、近隣市町村と比べ高い傾向だ。一方、坪100万円台の取引もあり、不動産業者は「地価はあってないようなもの」と明かす。

 不動産業を手がけるユナイテッド(町港)の山田亮社長は「北谷ブランドがすごいのはもちろん、建築資材高騰などの複数の要素が重なって不動産価値が上昇している。戦争や自然災害などが起きない限り下がることはない」と断言する。

 同社の顧客のほとんどが米軍関係者だったが、新型コロナウイルスを機にリモートワークが増えたことで、日本人の割合が増加した。軍の家賃手当を前提にした賃料が高い物件に、県外の人が住むようになった。コロナを機に、住宅需要に変化が生じているという。

 香港や台湾の富裕層も、不動産投資を目的に町内で次々とマンションを購入している。山田社長は「不安定な情勢から、将来性のある沖縄で分散投資をしようという傾向がある。米軍向け賃貸をしたいという外国の方もいる」と明かす。「今後、北谷に住める人と住めない人とで二極化していくのではないか」

 国の2018年の住宅・土地統計調査によると、セカンドハウスや別荘などに該当する「二次的住宅」は、北谷町に330戸存在する。住宅総数に占める割合は2.48%で、県平均の約5倍。県内市町村で断トツに高い。

 大阪府から美浜に移住した女性(71)は、18年前に美浜で新築マンションを購入した。昨年に夫婦で完全移住するまでの間、毎月沖縄を訪れ、大阪との2拠点生活を送っていた。「海が見える所に住みたいと思ったのがきっかけだった。北谷は多様性がある地域。選んで間違いはなかった」とうなずいた。

(石井恵理菜)

ニライの都市へ 北谷・振興計画50年 目次

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2024年(令和6年)3月に掲載された石井恵理菜記者による連載「ニライの都市へ 北谷・振興計画50年」全6回は、琉球新報デジタルプライムで読めるほかに、電子新書として読み切りで購入することができます。