今帰仁村内で唯一のイチゴ農家「スリーマウンテンファーム」の山城裕亮さん(33)は、母校の今帰仁中学校3年生90人の卒業式前日(3月8日)の給食にイチゴを無償提供し、卒業祝いのケーキとして思い出に残る給食に協力した。山城さんはスイカに加えてイチゴ栽培に力を入れており、「まだ小規模だが来季は1日1組限定でイチゴ狩り体験も検討している。今帰仁と言えば、夏は『スイカ』、冬は『イチゴ』と言われるように、たくさんの皆さんに知ってもらえるよう頑張っていきたい」と意気込んでいる。
山城さんは今帰仁小で児童会長、今帰仁中で生徒会長、北山高校でも生徒会長を務め、千葉県の大学では県人会副会長となり、常に仲間のリーダーとして過ごしてきた。
学生時代は新しい企画や運営などに取り組むのが好きで、高校時代は伝統のパネル文字に代わり「ウォーターボーイズ」をやったことが学生時代の一番の思い出という。教員免許を取得し、大学卒業後は今帰仁中学校で臨時教諭として後輩たちと接した時代もあった。
その後、同村観光協会に誘われ勤務。県外のフェアなどに参加してみると「今帰仁って何て読むの」などと地元の知名度が低いことにとても驚いた。「魅力的な自然や物などがたくさんあるのに」と悔しかった。
今帰仁と言えばスイカだと思い、これまで絶対に家業の農業はやらないと思っていたスイカ農家を継ごうと28歳の時に決意。その後、村内でやったことのない「イチゴ」も作ってみたいと思った。
周囲に話すと「難しい」「設備はどうする」など最初は笑われた。思いは変わらず「イチゴをやってみたい」と言い続けると、名護市の農家と出会い「仲間ができてうれしい、一緒に頑張りましょう」と歓迎され、安心した。そこでイチゴに関わる資材や、虫や病気の種類、それを予防する農薬の散布など手ほどきを受けた。
山城さんは「自分がやりたいことは口にし、出会いは大切にしたい。一緒に頑張る仲間がいればおのずと成長できると思うし、興味がある人がいるなら、自分の知っている知識を惜しみなく共有したい」と話す。
栽培1年目は販路もなくSNSで個人販売を始めた。毎回購入してくれる方に「山城さんのを食べたら他のが食べられないさー。今帰仁でイチゴ作ってくれてありがとう」と感謝された時には、やって良かったと心から思った。
県産イチゴは他県産に比べ、完熟で収穫でき甘みが強く、酸味も適度にあり濃厚な甘酸っぱさが特徴。赤い光沢が美しく、断面もケーキ製菓に向いて映えるという。
日々の作業の様子やイチゴの販売方法など、インスタグラム「スリーマウンテンファーム」で検索すると見ることができる。
(新城孝博通信員)