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市町村の「沖縄戦」一冊に 若手研究会、議論重ね完成 15日糸満でシンポ「地域史の活用図って」


市町村の「沖縄戦」一冊に 若手研究会、議論重ね完成 15日糸満でシンポ「地域史の活用図って」 このほど発刊された「続・沖縄戦を知る事典 戦場になった町や村」
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 沖縄県内の市町村史や字誌の「戦争編」を基に、沖縄の地域や島々での沖縄戦を一冊にまとめた「続・沖縄戦を知る事典 戦場になった町や村」(吉川弘文館)が、6月1日に発刊された。15日午後2時から、糸満市摩文仁の県平和祈念資料館1階ホールで発刊記念シンポジウムが開かれる。編者の一人で、ひめゆり平和祈念資料館学芸課長の古賀徳子さんは「市町村史の戦争編は、全国にも他にはない蓄積の宝物だ。多くの人に知ってもらい、この本を入り口に市町村史の活用を図ってほしい」と語る。

 2019年発刊の「沖縄戦を知る事典―非体験世代が語り継ぐ」(吉川弘文館)の続編で、執筆は市町村史編集室の事務局、大学教員、博物館学芸員、ジャーナリストら戦争体験の記録や教育・報道の現場で活躍する非体験世代で、「沖縄戦若手研究会」のメンバー28人。市町村史を読み込み、研究会で議論を重ね、約2年半かけて完成させた。

編者の一人の古賀徳子さん

 沖縄では1970年代の「県史」と「那覇市史」の沖縄戦体験記録刊行をきっかけに、80年代以降、ほとんどの市町村が市町村史編さん室を設置して、地域住民への聞き取り調査に精力的に取り組むようになった。調査を通して住民の戦争体験の掘り起こしが進み、それまで知られていなかった地域ごとの実態が明らかになり、沖縄戦研究が進展してきた。

 今回の本が取り上げたのは沖縄本島の各地域と周辺離島、大東島、宮古・八重山の24市町村で、各項目に地域の特徴が分かる見出しを付けた。15日のシンポジウムでは本の成り立ちのほか、執筆者が分かりやすく地域の特徴を話す。

 沖縄戦体験者が高齢化し、直接体験を聞けなくなる中で、古賀さんは「体験者が残してくれた記録があることを前向きにとらえたい。戦争を体験していない私たちがきちんと記録や証言と向き合い、どう伝えるか、語り直すか、考えていくことが大事だ」と力を込める。シンポジウムについて「沖縄戦に関心がある人だけでなく、地域の歴史に興味がある人など、多くの人に来てほしい」と呼びかけた。問い合わせはokinawasenwakateken@gmail.com

 (中村万里子)