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疎開生活、家族を失う悲しみ…「命どぅ宝」一人芝居で 浦添市教育長・銘苅さん 沖縄


疎開生活、家族を失う悲しみ…「命どぅ宝」一人芝居で 浦添市教育長・銘苅さん 沖縄 沖縄戦で亡くなった娘を思い、涙に暮れるおじいを演じる銘苅健浦添市教育長=20日、浦添市の前田小学校体育館
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 【浦添】慰霊の日を前に浦添市立前田小学校が20日、同校体育館で平和集会を開いた。市教育長の銘苅健さんが、戦争の悲劇と命の大切さを描いた一人芝居「いくさゆーぬ ゆっかぬひー」を演じた。全校児童が参加し、平和への思いを深めた。

 「いくさゆーぬ ゆっかぬひー」は、教員時代に平和劇に取り組んできた宮城淳さんが手掛けた平和劇「ゆっかぬひい」を基に、銘苅教育長が一人芝居に仕立てた作品。2019年に初演された。

 物語は、静かに三線を爪弾くおじいの下に、孫が戦争体験を聞きに来る場面から始まる。

 おじいは「戦争の話はあまりしたくない。怖かったことを思い出す」と難色を示すが、「学校の宿題だから」とすがる孫にほだされ、自身の過去を語り出す。

 学童疎開のため乗船した児童784人を含む1400人余りの人が亡くなった「対馬丸の悲劇」。「やーさん(ひもじい)、ひーさん(寒い)、しからーさん(さびしい)」の三重苦だった疎開児童の生活。兵隊が校舎を利用するようになり、児童は勉強よりも飛行場造りなどにかり出されたこと―。おじいは、戦時下の沖縄で暮らす児童の姿に触れながら、家族と楽しく暮らした日々、戦争によって起こった家族の悲劇を聞かせる。

 戦争で家族を失ったおじいは最後に「命を大切にして、毎日元気に生きないと大変になるよ。命(ぬち)どぅ宝、命こそ大切。命がずっと祖先からつながっていることを忘れないで」と、孫に言い聞かせた。観劇する児童は、前半はひょうきんな口ぶりだったが、次第に熱を帯びる銘苅教育長の芝居に引き込まれ、終幕には、一様に真剣なまなざしで舞台を見つめていた。

 一人芝居上演後、平和への願いを込めて児童が「沖縄から平和のうたを」を歌った。

 東芹奈さん(11)は「劇を通じて、私たちの命があるのは、ご先祖さまたちが、戦争の中を一生懸命生きてきたからだと分かった。戦争を経験した人たちは苦しかったと思う。平和、というすてきな言葉の意味をしっかり考えて、戦争が起きないようにし、命をつないでいきたい」と話した。

  (藤村謙吾)