普天間高校前の「点心」きょう閉店 28年値上げなし、2世代に愛された「青春の味」  沖縄


普天間高校前の「点心」きょう閉店 28年値上げなし、2世代に愛された「青春の味」  沖縄 10日に閉店する「点心」の前に立つ比嘉さん=6日、宜野湾市普天間
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 宜野湾市の普天間高校校門横にある「点心の店(中華どんぶりの店)」が10日で閉店する。創業から28年、多くの普天間高生に愛された「点心」の閉店を前に、連日多くの現役生や卒業生が通う。店主の比嘉隆さん(68)は「まだ実感がない」と、店が閉まる最後のその時まで忙しくフライパンを振っている。

 比嘉さんは、父が始めた中華料理屋「中国飯店」や北中城村安谷屋に移転した「パンダ食堂」で働いていた。1996年ごろに「点心」を開業し、1人で切り盛りしてきた。現在は「パンダ食堂」のオーナーも務める。

 宜野湾市が進める「普天間飛行場周辺まちづくり支援事業」で、店の場所が松並木になる計画があり、立ち退きと共に閉店を決めた。

 「点心」は、酢豚やマーボー豆腐など中華料理をご飯に載せたどんぶり弁当が売りだ。28年で一度も値上げはしていない。青春の味を求めて、生徒のみならず、卒業生も通っていた。1人で1日100食以上を作る日もあったと言う。

「点心」の比嘉さん(右)と弁当を買いに来た卒業生=6日、宜野湾市普天間

 点心を取り上げたテレビ番組で閉店が知られ、連日さらに多くの卒業生が訪れる。フランスなど海外から来た卒業生も。6日も店内は高校生と卒業生でごった返した。

 卒業生の東江造さん(40)も閉店を知り、石垣市から休みを利用して駆けつけた。「高校の周りにあった店がどんどんなくなっていく。青春の味がなくなるのはさみしい」と惜しんだ。

 去年卒業した玉城裕也さん(19)は、卒業式の日に比嘉さんがマーボー丼を作ってくれたことが思い出だ。「悲しいけど、続けてくれたことに感謝です」と話した。高1の生徒は「閉店を知ってから週3で来ている。めっちゃおいしい」と笑顔を見せた。

 客から感謝の言葉と共に「別の場所で続けないの?」と聞かれる比嘉さん。その都度「若かったら考えたけどね」と答える。店を始めた時の高校生の子どもの代“2世”が来るようになったことにも感慨深げだ。

 比嘉さんは「一番は卒業生が来てくれることがうれしい」と笑顔。閉店に「今は期待に応える弁当を作ることに精いっぱい。終わって初めて気づくのかも」と少しさみしそうに笑った。