南風原町新川に民間事業者が葬祭場建設を計画していることをめぐり、建設地に隣接する医療福祉施設7団体から、霊きゅう車の往来や路上駐車の増加による交通事故の懸念など環境面や安全面で不安の声が上がっている。
8月30日、近隣施設の7団体のうち6団体の関係者が南風原町の赤嶺正之町長に計1697人分の反対署名を提出した。呼びかけは、認定NPO法人こども医療支援わらびの会「ファミリーハウスがじゅまるの家」、県看護協会、県歯科医師会、県小児保健協会、県医師会、県薬剤師会、県栄養士会の7団体。
予定地に隣接する「ファミリーハウスがじゅまるの家」は、病気や障がいで高度の医療を必要とする子どもとその家族が滞在し、年間4千人余りの利用者がいる。関係者は「(患者やその家族への)精神的な負担がとても大きい。到底容認できるものではない」と建設反対を伝えた。
建設予定地を含む地域は、病院や医療関係団体の事務所等が集積し、町の総合計画でも医療拠点に位置付けられる。今回の葬祭場建設は開発行為に当たらず、県が許可した。医療拠点に葬祭場が建設されることについて、赤嶺町長は「町として建設はそぐわないと考えるが、法的な権限は町にはないことを理解いただきたい」と述べた。
事業者は新川区で仏具店を営んでいたが、道路拡張工事に伴う立ち退きで、現在の建設予定地を県から紹介され、2011年に土地を取得した。その時点で葬祭場建設の計画はあったが、近隣施設や住民へ共有されたのは、工事着手予定の1カ月前のことし7月だった。7月の説明会で葬祭場の建設を知った近隣の医療施設関係者は「寝耳に水だ」と動揺が広がった。
葬祭場は鉄筋コンクリート2階建て。延べ床面積約560平方メートルの予定。規模は小規模な家族葬、100人以下の告別式を想定するが、道路環境や規模に対する駐車スペースの少なさなど、安全に対して懸念の声がある。対策として、事業者からは隣接する県看護協会側に目隠しのため1メートル80センチの壁を設置することや、施設駐車場(20台予定)を用意するほかに、近隣駐車場の確保も調整しているとの説明があった。これに対しても、十分ではないと指摘する声がある。
28日には近隣の医療福祉施設7団体のうち1団体が町議会議長宛てに陳情書を提出した。(1)南風原町が事業者に対し、建物の外観や管理・運営等に関し協議を行い、合意形成に努めるように指導する(2)「葬祭場の設置等に関する指導要綱」の策定―の2点を求めた。
町の担当者は「全国的な事例や与那原町や西原町を参考になるべく早めに要綱を作っていきたい」と述べ、「建設後どういった形で配慮ができるか、意見をすり合わせて確認していくことが必要と感じる。今後も引き続き、意見交換を重ねたい」と話した。
(田中芳)