【嘉手納】急速に進む町の人口減少に歯止めをかけようと、嘉手納町は2024年度の一般会計予算で、人口対策のために総額約7360万円を計上した。全て町独自事業で、一般財源を充てる。子育て支援策と住宅対策という、ソフト・ハードの両事業で力を入れる。當山宏町長は「嘉手納町は中部で唯一人口が減少している地域だ。大幅に施策を拡充することで、若い世代に町で子育てをしてもらいたい」と話す。
町の24年2月時点の人口は1万3023人で、11年から934人減少した。22年から23年は208人が減少し、近年で最も減少した。當山町長は、人口減少で、サービス産業の撤退といった産業空洞化などさまざまな問題が生じてしまうと指摘する。
若年層の転出が顕著だ。就職や結婚を機に町を離れ、地元で住宅が見つからず町外で家を建てるケースも多い。町内は家族世帯向けの2LDKや3LDKの賃貸が少なく、町担当者は「単身世帯向けの賃貸は多く、需要と供給のミスマッチもあるのではないか」と分析する。
町の調査によると、人口減少の主な要因は、宅地・住宅不足とされている。町面積の82%が米軍基地に接収され、狭い土地に住宅がひしめき合っている。
町は17年度から、新たに住宅を取得した人や、古い住宅を撤去して同じ場所に新築した人などに補助金を交付する「定住促進事業」を実施し、住宅を確保してきた。22年度までに同事業を活用し213戸が建てられた。
嘉手納町は、小中学校の給食費を県内で初めて完全無償化するなど、先駆けて手厚い子育てサービスを提供してきた。一方で関係者は「近隣市町村も追いついており、差別化が難しくなった」と指摘する。
町は24年度から、未就学児の副食費無償化や入学祝い金の給付など大幅に子育て支援策を拡充する。子育て世帯を町に呼び込みたい考えだ。
ハード面では、建物を解体・撤去する人に補助金を給付する事業を新たに実施する。既存の定住促進事業と違い、住宅を建てる条件はない。土地を生み出し、住環境を整える狙いがある。
町担当者は「建物を壊したいけど住宅を建てる予定もなく、老朽化や空き家のまま建物を放置する人もいる。解体の後押しになればいい」と話す。當山町長は「新たな土地を生むことで、町民の受け皿をつくりたい」と話した。 (石井恵理菜)