夜の潮だまりにぷかぷかと…
UFO発見!…といっても空ではなく、潮だまりにぷかぷか浮かぶ未確認浮遊物体(Unidentified Floating Object)です。
夜、ライトで照らした潮だまりに、1cmにも満たない小さな浮遊物体を見つけました。何だろう、と追いかけてみると、どうやらイカの子どもらしい。でも、こんな形と泳ぎ方を見るのは初めて。目の上の2本のツノは、イカの足を2つにまとめたもの。イカの胴体にあたる部分の先にはとがった出っ張りがあり、後ろから見ると三角形、まるでハート形です。出っ張りをさらによく見ると、透明なヒレがパタパタして、これで泳いでいるようです。
ふらふらと上下に揺れながら泳ぐ姿は、ツノを持ったトナカイが走っているように見えなくもありません。水中を漂う海藻か何かに似せているつもりでしょうか。
この生きものを調べると、どうやらヒレギレイカの子どもらしいと分かりました。ヒレギレイカは、暖かい海の沖合に暮らす小型のイカで、親になっても数cm。イカの胴体を縁取るヒレが糸状に切れているので、この名が付きました。親のサイズの個体は、水深500〜800mから見つかっています。でも、子どもはこんな浅瀬にやって来ることがあるんですね。
お腹の中に透けて見える白いものは発光器。深い海に暮らす生きものは、しばしば体を光らせて、下から来る天敵の目を紛らわします。この赤ちゃんイカも、今頃は少し大きくなって、遠い外洋の深い海でひっそり光っているのかもしれません。
Vol. 41 ヒレギレイカ
Chtenopteryx sicula
● 目:頭足目 Cephalopoda
● 科:ヒレギレイカ科 Chtenopterygidae
● 属:ヒレギレイカ属 Chtenopteryx
動画撮影:
ヒレギレイカ 2021年2月10日(浦添市 西海岸パルコ前)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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