沖縄のお盆は旧暦です 〝旧盆あるある〟 マックにケンタ、コンビニも!?


沖縄のお盆は旧暦です 〝旧盆あるある〟 マックにケンタ、コンビニも!?
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄の年中行事には、今も旧暦が息づいています。
 「旧正月(ソーグヮチ)=旧暦1月1日」
 「浜下り(ハマウリ)=旧暦3月3日」
 「清明祭(シーミー)=旧暦3月吉日」
 「鬼餅(ムーチー)=旧暦12月8日」…。

 ご先祖さまを大切にする沖縄では〝お盆〟だって旧暦リズム! 旧暦7月13~15日の「旧盆」は仕事を休む人や、最終日の「ウークイ」には公立学校が休校になる市町村もあるほどです。

 お盆の風習は全国各地で異なるものですが、特に沖縄には他県にない独特の風習や必須アイテムがあるんです。

 沖縄でも、八重山や宮古などの離島など地域、各家庭によって習慣はさまざまですが、よくある沖縄の旧盆の〝いろは〟や〝あるある〟を少しだけご紹介します。

お盆は「旧盆」!
「ウンケー」→「ナカヌヒー」→「ウークイ」

 「お盆」といえば沖縄県外では一般的に新暦の8月13~15日です。その期間前後に多くの企業や官公庁が「お盆休み」「夏休み」となり、帰省ラッシュのニュースがメディアをにぎわせますね。

 一方、沖縄で「お盆」といえば旧暦7月13日~15日の「旧盆」です。

1日目は「ウンケー」(お迎えの日)

2日目は「ナカヌヒー」(中の日)

3日目は「ウークイ」(お送りする日)

と呼びます。

 

 ご先祖さまを「お迎えする」「お送りする」という表現って、とても素敵ですよね。

 沖縄の「旧盆」は準備から気合が入っています。

「旧盆」前にお墓のお掃除

旧盆を前に早朝から一族の門中墓を清掃する人たち=2015年8月、八重瀬町

記事:旧暦の七夕 旧盆に向けお墓掃除

全国的には、お墓参りや墓掃除はお盆期間中に行う地域が多いのではないでしょうか?

沖縄では旧暦の七夕に当たる日に、一族のご先祖様が眠るお墓を掃除することが多いのです。

アツイ旧盆商戦!

 お供え物の〝定番アイテム〟の一つ、青いバナナやパイナップルなどの果物は旧盆に入る1週間ほど前に輸入がピークを迎えます。

記事:青いバナナ、続々沖縄に入荷
旧盆のお供え物、検品作業ピークに

入荷した青物バナナを検品する職員=2017年8月26日、那覇市港町の那覇青果物卸商事業協同組合

旧盆に「オードブル」!?
マクドナルドやケンタッキー…旧盆商戦がアツイ

 旧盆やシーミー(清明祭)、正月などの年中行事には、沖縄独特の「重箱料理」をお供えするのが習わしです。

 その中身は豚の三枚肉やゴボウ、こんにゃく、田芋(ターンム)、昆布、揚げ豆腐、衣が厚いうちなー天ぷら、かまぼこ、餅などが一般的です。
 

一般的な沖縄の重箱料理

 以前は各家庭で作っていた重箱料理ですが、今はスーパーや総菜店、コンビニで買う家庭も増えてきました。

 重箱料理に加えて、いろんなごちそうをギュッと詰め込んだ「オードブル」も沖縄では定番です!

 こちらもアツイ商戦が繰り広げられます。
 

旧盆前になると、スーパーの折り込みチラシも旧盆商戦一色に

 人口当たりの店舗数が全国一多いというケンタッキーはもちろん、近年はマクドナルド、コンビニエンスストアも旧盆商戦に参戦しています。

マクドナルドやケンタッキーなどのファストフードや、沖縄ファミリーマートなどのコンビニでも旧盆キャンペーンがあります

「ウチカビ」も高級志向に?

 沖縄の旧盆やシーミーに欠かせない〝必須アイテム〟と言えば、「ウチカビ」と呼ばれる「あの世のお金(紙銭=カビジン、しせん)」です。

 旧盆の最終日の「ウークイ」の日に、ウチカビを燃やしてウートートーをしてウヤファーフジ(先祖)の霊を見送ります。

市販されているウチカビ

 最近では沖縄のお笑い芸人が、ウチカビを使って沖縄の伝統文化を紹介する歌や踊りを考案したり…

記事:【動画・終盤スゴイ】保育園でウチカビ揺れる! 大兼のぞみwithDJレイコ スペシャルライブ

ウチカビに模した紙を振って踊る子どもたち=2016年、那覇市内の保育園

 ちょっと高価なウチカビを発案するなど、高級志向の人を満足させる商品開発の動きまでありました。

記事:ご先祖満足、高価ウチカビ

 

断切金箔をほどこしたつややかさが特徴のタイプ(左)と、木くずを練り込み飛散防止をしたタイプ=2017年4月

 続いて、旧盆の主な〝儀式〟をご紹介します。(八重山や宮古などの離島など地域によっても異なります)

ウンケーに何やるの?

 旧盆初日の「ウンケー」には、ご先祖さまの霊をお迎えする光景が各地で繰り広げられます。仏壇や位牌をきれいにし、生花や果物を仏壇に飾ります。〝沖縄ならでは〟のお供え物といえば、ご先祖さまが杖にするサトウキビ(グーサンウージ)や、アダンの実、パイナップル、青いバナナなどが特徴的です。

仏壇の前でウンケージューシーを食べる家族=2016年8月

 夕方には親族が集まり、門の両脇で迎え火をたき、ご先祖さまの霊を迎え入れます。ご先祖さまと一緒にやってくる悪霊のため、仏壇の片隅には、芋などの野菜を刻んで水に浮かべたミンヌクー(水の子)をお供えします。「ウンケージューシー」という沖縄風炊き込みご飯や酢の物を食べるのも一般的です。

記事:【動画】旧盆、各地でウンケー
家族そろってご先祖お迎え

手を合わせ先祖を迎える親族ら=2015年8月

 石垣など八重山ではウンケーに伝統行事「アンガマ」が行われます。グソー(あの世)からの死者とされるウシュマイ(翁)とウミー(媼=おうな)が、花がさをかぶったファーマー(子孫)を連れて各家庭を回り、歌や踊りを祖先にささげ、独特の珍問答で場を盛り上げます。

記事:珍問答、笑い誘う
アンガマが祖先供養 石垣のウンケー

歌や踊りで祖先を供養するアンガマ一行。ウシュマイとンミーが珍問答で笑いを誘った=2015年8月、石垣市内

ナカヌヒーに何やるの?

 2日目の「ナカヌヒー」には三度の食事をお仏壇に供えます。この日を中心にウチナーンチュの多くは親族の家々を行脚し、それぞれの仏壇に手を合わせます。

 それぞれの場所で重箱&オードブル&ビール&泡盛などのごちそうが振る舞われ、〝カメーカメー攻撃〟に見舞われるため、ウチナーンチュの多くがヘベレケになっちゃうわけです。

 豚のモツ(内臓)で作るお吸い物「中味汁(なかみじる)」や、ソーメン料理を食べる家庭も多いです。

ウークイに何やるの?

 旧盆のクライマックスは最終日のウークイです。

 ご先祖さまの霊をお送りするため、夜が更けてから家族一同で仏壇を拝み、水を張った容器でウチカビ=紙銭(カビジン)を燃やし、お供え物の一部を入れ、ミンヌクー(悪霊用のお供え物)と一緒に門の外に出して線香を焚き、ご先祖さまの霊を送り出します。

記事:【動画あり】ご先祖さま、また来年 各地でウークイ

ウークイでウチカビを燃やしてウートートーをする家族=2015年8月、那覇市内

エイサーは旧盆が〝旬〟
「道ジュネー」がスゴイ

 近ごろは季節や地域を問わず、沖縄の芸能として披露されることが多いエイサーですが、もともとは沖縄本島や周辺離島の〝盆踊り〟として、ウークイの夜に地域の青年会の若者たちによって踊られていたものなんです。

記事:【動画あり】ご先祖さま、また来年 各地でウークイ

元気いっぱいの掛け声で太鼓を響かせながら練り歩く桃原自治会エイサー愛好会の子どもたち=2013年8月、北谷町

 地域によっては道ジュネーの最中には、車が通行できないこともあるので注意しましょう。

 

記事:結成50年 エイサー華やか
糸満・喜屋武青年会

美しい隊列と息の合った踊りを披露する喜屋武青年会=2014年、糸満市喜屋武

記事:継承120年“誇りの舞”
屋慶名エイサー「静と動」披露

「静と動」が絡み合ったエイサーを披露する屋慶名青年会のメンバー=2010年、うるま市与那城多目的広場

 地域によって曲やスタイルがそれぞれ異なる各地のエイサー。時代を越えて引き継がれた伝統は、地域の誇りでもあります。勇壮で荘厳な雰囲気の中、本場のエイサーを楽しむことができます。


 他県とはひと味もふた味も違う〝沖縄のお盆〟。近年は観光客に合わせてスーパーや観光施設、飲食店などは通常営業するところが増えてきましたが、離島など都市部を離れた地域では休業となる店も少なくありません。

 旧盆時期に沖縄に来県される皆さまは、ちょっと不便を感じることもあるかもしれませんが、本場のエイサーや道ジュネーなど、沖縄ならでは慣習を楽しんでくださいね。

 

― 編集後記 ―

 沖縄の旧盆がディープなら、〝旧盆あるある〟もやっぱりディープ。

 「絶対にあるのがオードブルとか料理についての文句!」
 「親戚のおじさんやおばさんから、いつもお小言を言われるからヤダ~」
 な~んて声が、比較的若いウチナーンチュ記者からもれ聞こえてきました。

 県外出身の私にとって、沖縄の年中行事はとってもディープ。近年は旧盆時期に完全休業する店や企業は少なくなりましたが、学生時代だった20数年前、何も知らずに旧盆時期に離島を訪れたときには、飲食店などは軒並みお休みでした。お店の人から「ご先祖さまが帰ってくるからね~。どこもお休みよ~」と当然のように言われたことを懐かしく思い出しました。

 観光立県だから仕方ないけど…いろんなことが〝本土化〟〝簡素化〟していくことには、少し寂しさも感じるのでした。

 

 佐藤ひろこ(さとう・ひろこ) 琉球新報Style編集部。北部支社報道部、社会部、NIE推進室、文化部などを経験し、特に子どもを取り巻く諸問題に関心を持って取材してきました。大阪府出身。中2、小5、5歳の子育て中。目下、「働き方」「生き方」の見直しに挑戦中です。