来る9月4日(火)は古酒の日! というわけで、特集を企画したはいいものの、実は古酒についてあまり知識がない調査員。古酒の条件は? 長い年月寝かせると、味わいや香りはどう変化するの!? 専門家のもとを訪ね、話を聞きました。
調査員が向かったのは、那覇市旭町の沖縄国税事務所。
ご存じの通り、お酒を製造したり、販売したりするには免許が必要です。その管理をしているのが、国税事務所の間税課なんですね。
同課では産業振興も行っており、各酒造所の技術相談や支援に応じるほか、品質を評価する鑑評会なども開催しています。出迎えてくれたのは、鑑定官の宮本宗周(むねひろ)さん、相澤常滋(じょうじ)さん。では、さっそく話を聞いていきましょう。
3年以上で古酒に
そもそも古酒の条件って何ですか? と、まずは素朴な疑問をぶつけた調査員。
「法律的には、3年以上貯蔵したものが古酒です」と相澤さん。ふむふむ。そういえば、沖縄には古いお酒に新しいお酒を継ぎ足す「仕次ぎ」の文化がありますよね。例えば、5年ものの古酒に、新しい泡盛を継ぎ足した場合は、どうなるんでしょう?
「以前は、3年以上熟成させた泡盛が全量の50㌫を超えていれば古酒と表示してよいことになっていたのですが…。平成27年(2015年)8月1日から、『泡盛の表示に関する公正競争規約』の一部が変わりました。現在は、全量を3年以上貯蔵したものに限り、古酒と表示できます」(宮本さん)
じゃあ、新しい泡盛をブレンドしてしまったら、古酒とはいえない?
「そうなります。10年古酒と5年古酒をブレンドした場合、若いほうの年数を表示しなければならないので、5年古酒になりますね」。ちなみに現在は、仕次ぎの古酒を販売しているケースはごくまれなのだそう。仕次ぎの古酒は、家庭で育てるのが一般的とのこと。
甘くまろやかに熟成
では、次の質問。泡盛は古酒にすることで、どう変化していくのですか?
「全体的に、甘くまろやかになる傾向があります」と相澤さん。
「ウイスキーやブランデーは、樽(たる)から抽出される成分から香りをもらい、熟成していきます。ところが泡盛は、樽に貯蔵しないのに甘い香りが出てきます。これは、蒸留酒では他に例がありません」
甕(かめ)や瓶でも古酒化が進むのは泡盛ならではなんですね。
「寝かせることで、カラメルの香りを持つソトロン、バニラの香りを持つバニリンという物質ができるのもわかっています」
へぇ〜、天然でカラメルやバニラのような甘い香りが生まれるとは、すばらしい!
相澤さんの言葉に、宮本さんも「味わいがまろやかになるのは、貯蔵中に化学物質が変化していくことが要因です。例えば、刺激臭のあるエタノールや硫黄は、酸化や揮発が起こりやすいという特徴があります」と続けます。ということは…。年月が経つにつれ刺激臭が抑えられ、まろやかになっていくわけですね。
「古酒をいただく時も、注いだ器をしばらく置いておくと、甘い香りが出てきます。これも、刺激的な香りが揮発し、その奥にある甘い香りが出てくるためです」(宮本さん)
「古酒には、バニラやカラメルのほかにも、いい香りがたくさんあります」と相澤さん。例えば、最後の琉球国王・尚泰王の四男であり、「古酒は沖縄の宝」と語った尚順男爵は、古酒の標準的な香りとして、白梅の匂い、熟れたホオズキの匂い、雄ヤギの匂いを挙げているそうです。
「古酒の豊かで多様な香りがどんな成分に由来するかは、まだ十分に解明されていません。だからこそ、これからも掘り起こせる可能性を秘めています。泡盛は、国内の他の焼酎と比べて、香りや味わいが強い。世界の蒸留酒と肩を並べるパワーがあると思っていますよ」と目を輝かせる相澤さんでした。
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