沖縄各地にある山に親しんでもらおうと、「おきなわ百低山ガイドブック」がこのほど制作された。8月11日の「山の日」にちなんで大会実行委員会によって作成された冊子だが、沖縄の山についてまとめたガイドブックは珍しく、13年ぶりだという。山の豊かな自然を安全に楽しめるよう、登山関係者らへの活用も期待されている。(暮らし報道グループ・慶田城七瀬)
「紹介しているのは56ですが…」
タイトルに「百低山」とあるが、沖縄には140~150の山があるとされる。県内の山には、登山道が整備されていなかったり、民間地や米軍基地内にあって立ち入れない場所もあるという。
制作には、各市町村の観光協会や沖縄山岳会から写真集めやマップ作りの協力を求めた。
ガイドブックを制作した県環境再生課主査の比嘉栄司さんは「実際に紹介しているのは56です」と明かした。取り上げたのは遊歩道で散策できて山の自然に親しめるところが中心だ。
本島から宮古・八重山まで全県を網羅し、起伏がない地形で知られる宮古島からは標高69メートルの通称「おっぱい山」が、標高525メートルの県内最高峰、於茂登岳(おもとだけ)と並ぶ。そのほか、親子連れでも楽しめる登山コースがあるうるま市石川岳や恩納村の県民の森なども紹介されている。地図のQRコード付きで、スマホで位置を読み取ることが可能だ。
ガイドブックは、8月11日の「山の日」に、世界自然遺産登録地である本島北部やんばるの国頭・大宜味・東の3村と竹富町の4町村を主会場に開催された「山の日」全国大会で配布された。
担当の比嘉さんが県外で大会のPRをした際「沖縄に山はあるの?」とよく聞かれたという。大会が山のある都道府県で持ち回りで開催されてきため「沖縄の山を紹介して大会を全県的に盛り上げたかった」と語った。
低山を甘くみてはいけない
ガイドブックには、山を歩くための安全上の注意点や必要な持ち物チェックリストも掲載され、県内の登山愛好家にも今後の活用が期待される。
沖縄山岳会の創設者で県山岳・スポーツクライミング連盟の田場典淳理事長に、沖縄と本土の山の違いは何かを尋ねた。
「沖縄では(山頂という)ゴールを目指すとあっという間に到着してしまうが、途中でたくさんの生き物や植物との出会える」と話す。北部の山ではヤンバルクイナの鳴き声やノグチゲラのドラミング(木をつつく音)をよく耳にする。固有種の動植物が多く生息し、生物多様性に富むと言われる自然を味わえるという。また、雪が降らないために冬でも散策できるのも魅力の一つだ。
気軽に楽しめるとは言え、山での遭難も相次いでいる。「『道には迷っていないけど暗くて歩けない』という地元の公民館に救助要請が出ることもある」と田場さん。午後から登山に向かい、暗くて下山できなくなることがあるという。また、散歩に行くようなTシャツや半ズボンにぞうりで出掛け、虫に刺されたり足をくじいたりする人もいる。
田場さんらは10月に国頭村で開催する遭難対策講習会でガイドブックを活用する予定だ。
海のイメージが強い沖縄だが、山の頂上から海を眺められる場所も多い。この機会にガイドブックを片手に山を散策してみてはどうだろうか。
※ガイドブックは、5000部作成。今後市町村の観光協会などを中心に県内各地に配布されるほか、県環境再生課のウェブサイトでPDFでも閲覧できる。