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【動画あり】「沖縄方言すぎる白雪姫」YouTubeで60万回再生 美しい歌声とウチナーグチが印象的なrainさんの正体は? 沖縄方言「学びたくてやっている」


【動画あり】「沖縄方言すぎる白雪姫」YouTubeで60万回再生 美しい歌声とウチナーグチが印象的なrainさんの正体は? 沖縄方言「学びたくてやっている」 rainさんがYouTubeに投稿した動画「沖縄方言すぎる白雪姫」で60万回以上再生された前編まとめ回
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 「あぎじゃびよいよい、でーじなとん」「しかまちかんぱち中の町」。グリム童話「白雪姫」のかわいらしいアニメ映像に、沖縄独特のアクセントと美しい歌声が絶妙にマッチ――。白雪姫がしまくとぅばで話したり、歌ったりするアフレコ動画「沖縄方言すぎる白雪姫」が話題だ。YouTubeへの投稿から2週間で、再生数が60万回を超える回も。動画を手がけるrainさん(32)は一体どんな人? その正体と思いに迫った。

「目立ちたい」から始めた動画、「残したい」に

 アフレコとは、映像などに後から音を加えること。動画では、白雪姫が「沖縄方言ゴリゴリのウチナーンチュ」という設定。継母の女王は沖縄県外の出身なのか、しまくとぅばが分からないため鏡に教えてもらいながら学んでいる。県外出身の王子様と白雪姫の恋を成就させようと、白雪姫に共通語を学ぶよう仕向けるが…。7人の小人は「島袋のおじさんたち」として登場。狩人は「安次嶺さん」と、既存のキャラクターも沖縄色が強い。映像は著作権切れの作品を使用した。

 動画を作成したrainさんは沖縄県北谷町の出身で、現在は県外に暮らす。職業は「仮歌シンガー」。作曲家が歌手や声優に渡す楽曲に、仮のメロディーを歌って入れる役割だ。YouTube投稿は当初、自らの声を披露して仮歌の仕事依頼につなげる目的から始めた。

仮歌シンガーとして活動する「rain」さんのイメージプロフィル画像(本人提供)

 「1本目は普通に歌って投稿したのですが、なんか面白くないなって。目立てること、ほかの人との違いは何かと考えたら、沖縄出身というアイデンティティーだと思ったんです」

 そこからAdoの「新時代」など、ヒット曲の歌詞を全てしまくとぅばに訳して歌うシリーズを始めた。

当初はヒット曲をしまくとぅばで訳して歌う動画を投稿していた

 アニメ「白雪姫」のアフレコ動画もその流れで作成した。当初は白雪姫の登場場面における歌をしまくとぅばにして歌う予定だったが、SNSで白雪姫のアニメ映像とオリジナルの音声を組み合わせたアフレコ動画がはやっていた。rainさんも思いつきでアフレコに挑戦してみると、再生数は増え、「続きが見たい」との反響があった。9月21日時点で、前編のまとめと1~6話までの続編を作った。

 しまくとぅばに訳する過程は、rainさんの意識も変えた。沖縄のしまくとぅばを研究している友人と一緒に学び、発見があった。

 「うちなーぐちにはいろんな言葉があって、面白いと思ったし、私たちの世代は本当にうちなーぐちを知らないんだと感じました。最初は目立ちたくて始めたのですが、今は動画を見てて一つでも方言を知ってもらえたらいいと思うようになりました」

 しまくとぅばの面白さを伝えたい。動画の目的が変わっていった。

白雪姫も王子様も女王も「島袋のおじさん」も…1人で11役?

 白雪姫のアフレコ動画は、しまくとぅば訳もシナリオ作成も編集も、rainさんが1人で全て担う。途中で流れる唐船ドーイの歌三線の音色以外は、全てrainさんの声だ。白雪姫も王子様も島袋のおじさんたちも、1人で11役を担当する。その着想について「妄想で作っている」「自分の頭の中を披露している感じ」と笑う。

 登場人物の設定や物語の展開で意識しているのは「沖縄方言を知らない人が見ても面白い」ということ。

白雪姫が驚いたときに発したセリフ。沖縄に住んでいると耳なじみがあるかもしれない

 白雪姫が発するのは完全なしまくとぅばではなく、共通語としまくとぅばや沖縄独特のアクセントが混じったいわゆる「うちなーやまとぐち」だ。rainさんは「友だちや親戚のおばさんがしゃべってるような話し方が、耳なじみがあると思ったから」だと話す。

 女王のキャラクターは、しまくとぅばを知らない人と同じ視点で設定した。

 ローカルCMのメロディーとフレーズも効果的だ。白雪姫が小売店「ビック1」のCMソングを口ずさみながら花を摘んだり、「島袋のおじさん」たちが泡盛「うりずん」のCMソングを歌いながら歩いたりする場面は、CMを知ってる人なら笑わずにはいられない。「最初は挿入歌も全部方言に訳していましたが、何か違うと思って沖縄のローカルCMにしてみました。ローカルCMは面白いし、沖縄方言を知らない人でもとっつきいやすいはずだ」と語る。

7人の小人は「島袋のおじさん」として登場。ローカルCMのメロディと絶妙にマッチする場面
女王はしまくとぅばを知らないという設定。鏡に問いかけて勉強している

憧れていたおばあの方言…「知らない人も楽しめる」にこだわる理由

 動画作成でしまくとぅばの面白さに改めて気付いたrainさんは、幼い頃から祖母が話すしまくとぅばが好きだったという。「井戸端会議でおばあ同士が話しているのを聞いていて、めっちゃ面白いと思っていました。何を話しているか分からないけれど、すごくかっこよくて憧れてもいました。だから、自分は沖縄で生まれたのに、なぜ祖母のように話せないのかと思っていたこともありました」

 一方で、8歳下の弟が全くしまくとぅばを知らないことにも衝撃を受けたという。「私たち世代でも知っている方言でさえも知らなくて…。これはちょっとでも残さないといけないと思いました」

動画「沖縄方言すぎる白雪姫」で白雪姫が歌う場面

 これらの経験は、rainさんが「知らない人にも楽しめる」にこだわる理由になった。

 「アフレコ動画を見て、自分たちの土地の言葉ってこんな言葉なんだ、面白いって思ってくれたら、興味にもなってつながっていく」。そんな期待を抱いている。

 何よりも、rainさん自身が楽しみながら、しまくとぅばを学びたくてやっている。「見ている人と一緒に沖縄方言を勉強できたらと思います」。声を弾ませた。

(田吹遥子)

【rainさんの動画→】https://www.youtube.com/watch?v=yK38endRk84