中国海警局の領海侵入「海保の対応に不安はない」 沖縄を管轄する第11管区の本部長が定年退職


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第11管区海上保安本部の一條正浩本部長=16日、第11管区海上保安本部

 「やりきったというのはあまり感じない。まだまだ海保で仕事したいという気持ちはある」。沖縄近海を管轄する第11管区海上保安本部の一條正浩本部長(60)が3月31日、定年退職を迎える。海上保安官として約40年間、日本の海の安全を見守ってきた。「充実していたけど、寂しさもある」と現場を離れる心境を語った。

 2021年に11管本部長に着任。海難事故だけではなく、中国海警局の船舶による領海侵入などの問題も抱える管区の長として指揮を執ってきた。海警局の領海侵入は21年が34件、22年が28件と減少しているが、22年11月には76ミリ砲を搭載した海警局の船の接続水域侵入が確認されるなど、気の抜けない状況が続く。一歩間違えれば政治外交問題に発展しかねない緊張感を常に感じつつ「どんなメッセージが込められているか分からないが、現場職員の能力と戦術などを考えれば対応に不安はない」と話す。

 プライベートでは、新型コロナウイルスの影響で外出が制限され、沖縄の魅力を十分に堪能できなかったと心残りも吐露する。仕事で幾度となく訪れた宮古島や石垣島の海については「時間が止まっているようにきれいだった。心が癒やされた」と笑顔を見せた。

 退職に当たり、海上保安官人生で思い出すのは出発点である海上保安大学校の入学式。「入学式で受け取った証書には『学生を命ずる』と書かれていた。命じられて入学したんだよ」と当時驚いたことを冗談交じりに振り返りつつ「式ではほかの親御さんを含め、わが子の立派な姿を見て泣いていたな」と懐かしんだ。

 退職後のキャリアは未定だが、「海保に入って人間として成長できた。経験を生かすなら海関連の仕事かもしれないが、新しい分野にもチャレンジしてみたい」と展望を語った。

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