県自然保護課は27日、大宜味村や東村を南限とする国指定天然記念物のヤンバルクイナが、名護市源河で初確認されたと発表した。今年7月に県と環境省が実施している、希少種回復実態調査のため市内に設置された自動撮影カメラに写っていた。
県は「生息域拡大の証拠となる重要な事例だ」として今後も注視していく方針だ。
環境省沖縄奄美自然環境事務所によると、当初クイナは国頭村中心に分布が確認さていたが、マングース防除事業により、大宜味や東村に分布域が拡大し、2019年からは名護市にもカメラを設置して調査を始めた。
同事務所の生物多様性保全企画官の小野宏治氏は「(マングースなどの)捕食者がいなくなると、クイナがすめる環境が広がることが示された」と話した。
クイナ分布の南限とされる大宜味村塩屋から東村福地にかけての「SFライン」から南の名護市源河に設置したカメラに、赤いくちばしとしま模様の胴体部分が写り込んでいた。
クイナの調査を続ける山階鳥類研究所(千葉県)の尾崎清明副所長は「100%とは言えないが、幼鳥で親から分散した個体かもしれない。幼鳥でも5㌔ぐらい移動能力がある」と話す。名護市での定着については、確認された場所にマングースやノネコが分布しているとし「すぐに繁殖は難しいかもしれないが可能性はある」と話した。
クイナ保護活動に取り組むどうぶつたちの病院の長嶺隆理事長は「歴史が浅くこれまで確認されていなかっただけで、名護に戻ってきたかもしれない。クイナが定着できる環境をつくっていく必要がある」と話した。
ヤンバルクイナは、1981年に新種として発見された。82年に文化財保護法による国指定天然記念物に指定され、生息数は86年に推定1800羽とされていたが、ハブ対策などにより本島南部に放された外来生物のマングースの北上などにより2005年に720羽まで減少。「10年までに絶滅の恐れ」と非常事態宣言も発表された。
環境省や県はマングース防除やノネコ対策、交通事故防止対策に取り組み、21年には推定約1700羽まで回復したとみられている。(慶田城七瀬)
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