prime

<記者コラム>彼女の「高平良万歳」 田吹遥子(暮らし報道グループ文化芸能班)


<記者コラム>彼女の「高平良万歳」 田吹遥子(暮らし報道グループ文化芸能班)
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

 小学生の頃、髪が腰まで伸びている子は大抵、琉球舞踊を習っていた。私の幼なじみもその一人だ。学生時代に一度途絶えるも、社会人になって見た琉舞の舞台に心を動かされ、習い直した。彼女が出演する公演を見に行くのは、担当記者になる前の私が古典芸能と接する、数少ない機会だった。

 結婚し出産。働きながら子を育てる彼女は、この数年再び琉舞から離れていた。最近、徐々に子に手がかからなくなり「何かしたい」とつぶやくので「また琉舞やってよ」と言った。だが彼女は暗い顔をした。稽古代だけでなく、公演の手伝いやチケットのノルマ、衣装の購入…。予想以上にお金と時間がかかる現状を知った。「週2~3回稽古に通うだけならと思ったけど、ほかの手伝いまではできないから、諦めた」

 古典芸能を担当して1年。取材先では、担い手の減少を嘆く声を多く聞く。特に女性の多くは、出産というライフステージも相まって、続けるハードルは男性より高いと感じていた。だからこそ、幼なじみのような人が少しずつでも続けられる環境があれば、と思わずにはいられない。

 話を変え、「一番好きな踊りは?」と聞くと「(高平良)万歳を一度はやってみたい」と答えた。組踊「万歳敵討」のあだ討ち場面に登場する、かっこいい二才踊。彼女の「高平良万歳」を見たい。見られる日がきっと来る。瞳の奥の輝きに、そう確信した。