ブランド名「ジャングリア」として、2025年夏に開業することが正式に発表された北部で整備中の新テーマパーク。1年半後の開業まで近づく中、運営会社のジャパンエンターテイメント(名護市)が3日、名護市民会館で講演会を開き、構想を説明する。森林に囲まれたやんばるの自然の中でのアトラクションなど、国内に類を見ないテーマパークの経緯や課題、展望などを探る。
月内には住民説明会の開催も予定しており、今後採用活動や地域との連携を本格化させる。
■頓挫
14年2月、大阪市の米映画テーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を当時運営していたユー・エス・ジェイが新たなテーマパークを建設する方針を明らかにした。候補地はアジアの新興国のほか、国内では九州、沖縄から絞り込むとした。
目を付けたのは名護市のネオパークオキナワ。当時の市関係者によると、ユー・エス・ジェイ側は12年ごろから調査を進めていた。道の駅許田の後背地も調査に入っていた。
森林に囲まれたやんばるの自然を生かした動物テーマパークの素材を土台にした新たなパーク。映画スタジオの要素はなく、大阪の施設とは全く違う沖縄の自然を活用する形態を打ち出した。
中心にいたのが「ジャングリア」を発案したコンサルティング会社「刀」の森岡毅CEOだった。当時ユー・エス・ジェイに在籍していた。
ネオパークオキナワを中心とした約27ヘクタールの用地に、200億~250億円をかけて整備する計画が浮上した。施設全体を4区画とし、半日間を楽しめるようなパークで、年間150万人の来場を想定した。
沖縄振興を旗印に掲げた官邸が誘致に乗り出すなど政治色もにじみ出た。ユー・エス・ジェイと国、県による3者間の交渉はほとんど水面下で進められたが、突然、雲行きが怪しくなる。
きっかけは15年11月、米ケーブルテレビ大手のコムキャストが、傘下のNBCユニバーサルを通じてユー・エス・ジェイの株式の51%を取得したことだった。関係者によると、コムキャスト側が株主に加わった時点で事業の将来性などについて分析が始まった。採算性やアジア地域への展開戦略の観点などから沖縄への投資計画に難色を示していたという。16年5月、計画は突然立ち消えになった。
■「全て一から」
ジャングリアは、当時の計画が素地になっていると見られる向きが強い。だが、関係者は「全て一から。当時の計画がそうだったかも、今は別会社のことなので言えないが、ベースになっていることはない」と語気を強める。
名護市と今帰仁村にまたがる嵐山ゴルフ場跡地に建設するジャングリアのコンセプトは「Power Vacance!!(パワー・バカンス)」。主要なアトラクションに上げたのが、豊かな自然を空の上から一望できる気球体験や、森林の中を専用車両で恐竜から逃げ回るアトラクション、ジップラインだ。60ヘクタールの広さは約10年前の計画の約2・2倍の大きさだ。
「パークのコンセプトとして、その土地の魅力を消費者価値に変える考え方がある。沖縄に可能性があることと、沖縄の発展のためにという思いは変わっていない」。関係者は力を込めた。
■潜在力
沖縄の観光客数は増減を続けながらも右肩上がりで推移してきた。ユー・エス・ジェイが名護市の調査に入った12年度から急激な成長を見せ、13年度に600万人を初めて突破。最終的に650万人を超えた。北部テーマパークの当初案が発表された14年度は717万人となり2年間で125万人も増加した。
さらに12年に格安航空会社(LCC)専用ターミナルが国内で初めて開設されたことも魅力だった。LCCのピーチ・アビエーションが那覇空港を第2の拠点と位置付けるなど、アジアからのインバウンド(訪日客)が見込めた。
「足かけ11年」と語った森岡氏にとって、まさに近隣アジア主要都市の4時間圏内の立地が大きな要素だった。
関係者によると、約60ヘクタール規模のテーマパークへの購買人口は約1千万人。採算性を確保するためには、周辺地域の人口の半分が来場することが条件だ。大阪を中心とした関西圏の人口は約2千万人のため、一つのパークが成立する。首都圏は約4千万人のため、二つのパークが成り立つという計算だ。
国内では2時間圏内が立地に適しているが、旅先としての移動4時間の距離は「選択肢に入ってくる」(ジャパンエンターテイメント関係者)。刀は国内で新規事業を探ったものの、沖縄が最有力候補地として揺らぐことはなかった。
(謝花史哲)