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「走行中」「待機」トラックの稼働状況を見える化、業務効率化<迫る24年問題・沖縄の現場から>(7)物流(上)


「走行中」「待機」トラックの稼働状況を見える化、業務効率化<迫る24年問題・沖縄の現場から>(7)物流(上) トラックに設置された入力用の機器を操作する琉球物流運輸のドライバー=27日、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 謝花 史哲

「次の運送作業に向かってほしい」。琉球物流運輸の配車担当者が事務所に設置された大型モニターを確認し、ドライバーへ指示を送る。「走行中」「待機」「荷卸(におろし)」。地図上に稼働する各トラックの動きが映し出されていた。同社が導入する運行管理システム「デジタコ(デジタルタコグラフ)」だ。運行速度や距離、時間、作業情報などが記録できる。数値化により課題を見つけ、業務の効率化につなげる取り組みだ。

 2019年に施行された働き方改革関連法で、4月から運転業務の時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される。長距離運行など特性上、長時間労働になりやすいことから運送業は是正に時間がかかるとして適用が猶予されてきた。

運行管理システム「デジタコ」でドライバーの動きが見える化され「業務の効率化を図っている」という琉球物流運輸総務部の大嶺真彦課長補佐=27日、那覇市港町
運行管理システム「デジタコ」でドライバーの動きが見える化され「業務の効率化を図っている」という琉球物流運輸総務部の大嶺真彦課長補佐=27日、那覇市港町

 しかし労働力不足やEC市場の急成長による宅配便の取り扱い増加などで全国的に長時間労働の慢性化は課題のまま。その中で規制が始まれば1日に運べる荷物の量が減るため、利益が減ってしまう懸念がある。減収で雇用確保が難しくなり、さらなる人手不足を招き市場に影響を及ぼす懸念から物流の「2024年問題」として対策が急務となっている。

 「見える化は一つの解決策になる」。琉球物流運輸総務部の大嶺真彦課長補佐は、デジタコの効果を実感する。導入したのは22年8月。それまで紙の日報で記録してきたが、生産性向上へデジタル化を進めた。

 約30台のトラック全てに設置。実車や空車距離など稼働実績が記録される。時間管理の項目では運転、荷積(にづみ)、荷卸、休憩など各業務ごとに分類。日々の記録を自動的に積算し、即時に把握できるようになった。運転手の労働状況から、誰を動かすと効率的か判断する。走行距離や稼働時間から適切に指示ができるなど「メリットは大きい」(大嶺課長)。

 課題も明確になってきた。県トラック協会によると、2024年問題に当たっては、沖縄は県外の物流事情と異なる面がある。長距離運行の有無だ。陸送が島内で完結するため、県外のように長距離輸送は少ない。

 琉球物流運輸によると、1日平均の走行距離は50~60キロ。4月から月の拘束時間が284時間に縮まるが、現状の業務範囲では目安の時間内に収まっているという。大嶺課長補佐は「よっぽどのことがなければ県内で長距離による時間拘束という課題はないのではないか」と分析した。

 一方、荷物の積み下ろしの際に生じる“荷待ち”は、全国で拘束時間を伸ばす要因となっており、県内でも同様に難題として横たわっている。「やはり時間が取られていることが分かる」。大嶺課長はシステム内に表示されたドライバーの待機時間を指さした。

 (謝花史哲)