有料

大幅な賃上げなるか 県内企業24年春闘 大手関連は満額回答も 中小・零細への波及が焦点に 沖縄 


大幅な賃上げなるか 県内企業24年春闘 大手関連は満額回答も 中小・零細への波及が焦点に 沖縄  市街地上空
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2024年春闘は全国大手が労働組合の要求に相次いで満額回答する動きが広がる中、県内でも一部の企業で昨年を上回る水準の賃上げが実現するなど、今後の動きが注目される。県内の本格的な春闘は3月末ごろからの見通しだが、全国大手の関連企業で先行して妥結が進む。関係者によると、県外大手と同様に要求に対し満額回答する企業も。中小零細が多い県内でどこまで賃上げの機運が広がるかが焦点となる。

 連合沖縄によると、大手の関連企業で満額回答が報告されてきているという。イオン琉球は13日に正社員の定昇とベースアップ(ベア)合計で平均賃上げ率が6・27%で労使交渉を妥結。労組の要求には届かなかったが、昨年より1・46ポイント上回った。パートは0・45ポイント上回る7・45%。同社は「人材への先行投資だ。モチベーション向上もある。競争もある中でしっかり人材に投資していかなければならない」と説明した。

 14日に妥結した沖縄電力は一律で月額4500円のベアを実施する。ベアは08年以来、16年ぶり。賞与は年間総額で、燃料費高騰による財務状況の悪化で減額となった昨年比で13万2千円の引き上げとなる。厳しい経営状況が続く中、会社側は生産性向上を前提とした人への投資、優秀な人材確保を重視する方針を反映した。

 琉球銀行は「妥結には至っていないが、賃上げは前向きに検討している」と回答した。

 イオン琉球労組が加盟する小売りや外食などでつくる、連合傘下のUAゼンセン県支部によると、1次回答のあった3~4の労組の報告で昨年より高い賃上げとなっているという。喜納浩信支部長は「全国では(各業種で)昨年より4千~5千円高い平均1万8千円前後の回答が出ている。沖縄ではこの半分の9千円前後で賃上げできることが望ましい」と指摘した。

 県が15日発表した23年の消費支出(2人以上の世帯)は、実質で前年に比べ4・5%減少した。食料品の値上げなどで消費を抑える動きが顕著になっている。喜納支部長は「実質賃金も沖縄は全国より下がり幅が大きい5・5%のマイナスだった。仕入れ値の高騰で中小零細は収益が悪化しているかもしれない」としつつ、「賃金を上げないと消費は減る。県内の大手が率先して賃上げしモデルとなってほしい」と期待を込めた。

 沖縄国際大の宮城和宏教授(経済学)は「人手不足の中で生き残るには賃上げするしかない。賃上げには価格転嫁が必要だ。ただ中小零細に余力があるかどうかが問題だ」と指摘。「全国の賃上げは県内大手など一部に波及効果があるだろうが、全体に影響するかは分からない」と述べた。

 (謝花史哲、當山幸都、普天間伊織)