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カギは「勤怠管理の効率化」 残業上限規制、大手で進むデジタル導入 過半数は未対応<迫る24年問題・沖縄の現場から>(11)建設業(上)


カギは「勤怠管理の効率化」 残業上限規制、大手で進むデジタル導入 過半数は未対応<迫る24年問題・沖縄の現場から>(11)建設業(上) 民間や公共で大型の工事が続くなど需要は高い傾向が続く県内建設業界=1月、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 謝花 史哲

 リゾートホテルや分譲マンション、米軍や自衛隊基地の造成事業など大型の民間、公共工事が続く県内建設業界。新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、建設需要は高いまま推移してきた。一方、慢性的な人手不足が叫ばれる中、観光需要の回復に伴い各業種で人手が足りず求職者が優位の「売り手市場」が進む。建設の「2024年問題」に向け、県内企業の対応の遅れは否めず、準備してきた県内大手でも懸念は尽きない。

 法令適用が猶予されてきた建設業も4月以降は時間外労働(残業)の上限が原則、月45時間、年間360時間を守らなければならない。違反は6カ月以下の懲役また30万円以下の罰金が科せられる。工期に左右される業務のため、労働時間の厳格化はさらなる人手不足を招く恐れがある。

 課題解決の鍵を握るのが勤怠管理の効率化だ。現場に直行し、直帰する社員も多い業界にとって共通する課題となっており、県内大手の屋部土建は働き方改革関連法が施行された19年から積極的にセミナーに参加するなどガイドライン作成に着手した。それまで月単位の勤怠をエクセルデータで月末に提出していた方法から、デジタル媒体で打刻するシステムを導入。打刻率が上がるにつれ実態に即した数値が出てくるようになり、基準内の働き方を実現させている。

 同社のようにシステム導入など県内大手で対策が徐々に進んでいるが、対応できている企業は半数にとどまる。

 2024年問題を見据えて昨年9月から県建設業協会が実施している調査(2月末時点、回答175社、回答率50%)では、時間外労働上限規制に「準備できている」との回答は「現場・現場事務所」で46%にとどまった。「対応を模索・検討中」(41%)と、「対応できていない」(13%)を合わせると半数以上が4月に迫る時間外労働の上限規制の導入への対応が進んでいない。

 「本社・本店」でも「準備できている」としたのは54%にとどまり、労働力不足の上にのしかかる新たな業務が負担となっている実態が浮かび上がる。

 同協会によると、「準備できている」と回答した企業でもバックオフィス業務の簡素化や現場の技術員を増やすなどの対応をしているが、「何をやっていいか分からない」との声も多く、十分な対応が進んでいないのが現状だ。

 一方で県や市町村など行政側も電子契約への移行など書類の簡素化が一部進まず、民間工事では工期に追われる課題などがある。労働基準法違反は公共工事の受注などに影響するなど死活問題化しかねない。同協会関係者は「発注者の理解や連携も必要だ。事業者側もさらに業務の棚卸しを進めないといけない」と改善点を挙げた。

 

(謝花史哲)
(木―金曜掲載)