有料

沖縄の泡盛、消費拡大へ正念場 酒税軽減措置、来月から縮小 新商品開発や高付加価値化など鍵に


沖縄の泡盛、消費拡大へ正念場 酒税軽減措置、来月から縮小 新商品開発や高付加価値化など鍵に 酒造場の酒蔵で寝かされる、伝統の甕仕込み泡盛
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1972年の沖縄の日本復帰から半世紀以上続く泡盛の酒税軽減措置は、5月から、復帰60年となる2032年の廃止に向けて段階的に縮小される。既に一部では税率の変更に向け値上げを決めた酒造所もある。泡盛の出荷量は2004年をピークに減少傾向にあり、業界は正念場を迎える。新商品開発や高付加価値化、販路拡大など経営環境改善へ一層の工夫や企業努力が問われる。

 軽減措置により、県内へ出荷される泡盛の酒税は35%軽減されている。一升瓶(30度、1・8リットル)であれば通常540円の酒税がかかるが、県内では減税により351円となる。

 5月15日からは、出荷量が年間1300キロリットルを超える酒造所(グループA)で軽減幅が25%に、200キロリットル超~1300キロリットル以下の酒造所(B)で30%に税率が縮小し、その後も段階的に引き下げられる。200キロリットル未満の小規模酒造所(C)の軽減幅は32年の廃止まで35%のまま変わらない。

 県酒造組合によると、Aに該当する酒造所は3~4社、Bは10~11社、Cは30社余ある。AとBのみならず、当面は税率に変更がないCも含め、税の負担増に備え商品への価格転嫁を検討する動きがある。

 菊之露酒造(宮古島市)は税率が変更となる5月15日から、すべての商品の値上げを決めた。税率の変更幅に収まる範囲で商品価格を見直す。比嘉洋介取締役は、県外メーカーとの競争が激しくなることに触れ「県民が泡盛をどこまで購入してくれるか」との懸念を示す。一方、新商品開発や飲み方の新提案などで購買層の拡大にも力を入れていることに触れ「業界全体を盛り上げていきたい」と説明した。

 泡盛の付加価値を高める取り組みも鍵を握りそうだ。瑞泉酒造(那覇市)は、主力商品として、売値が高い古酒の展開を見据える。海外から古酒に引き合いも強くなっているといい、佐久本学社長は「古酒が主力となれば、(軽減措置が)完全廃止となっても経営的には影響はない。どこも自社の特長を生かし、取り組んでいかないといけない」と語った。

 (當山幸都、新垣若菜)