沖縄セルラー電話(那覇市)の新社長に宮倉康彰氏(61)が就任した。同社はCO2排出実質ゼロを目指す目標のめどが立ったとして、計画より6年前倒しでカーボンニュートラル(CN)宣言を発表するなど、サステナビリティ経営を推進する。宮倉社長にモバイルや新規事業などの方針を聞いた。
―就任の抱負は。
「昨年4月に沖縄に来た。沖縄の皆さまの温かい空気感に包まれていると、ここに暮らし働ける幸せを感じる。一方、つらい歴史や課題についての理解も進んだ。サステナビリティ経営を実践し、県民が笑顔になり、自然を守れるよう貢献していきたい」
―モバイルは県内で5割のシェアがある。他社攻勢にどう対応するか。
「競争の観点だけでは、企業論理の提案や施策になってしまう。今まで以上にお客さま視点を大切に、エンゲージメントを高め信頼を得れば、稼働は必ず増えていくと思う。当社は黎明(れいめい)期に県民向け低料金の『ウチなーホン』を出し、電波が弱いとのご申告にもすぐ対応するなど、中央に左右されず自分たちでやれることをやり、今がある。CN宣言を行い、環境にやさしいネットワークも提供しており、他社と差別化を図りたい」
「なぜ沖縄だけシェアが高いのか。KDDIグループという大きな戦略は同じだが、社員が沖縄愛にあふれているという違いがある。2月にお客さまが集まる感謝祭を開催したが、企画は全て社員がやりきった。全国にはない違いだと思う」
―県内では他社より実店舗数も多い。
「沖縄の皆さまはショップでご購入いただく比率が非常に高い。社会の流れとしてオンライン販売は進むが、リアル店舗も戦略的に重要だ。動画や金融サービスなど、さまざまな商材を提案する際は対面でご案内できる店舗の力が発揮される。ヘルスケア、アグリなど新規事業との親和性もある」
―5Gの対応エリアが拡大した。
「5Gが浸透しデータ量は増えている。イベント会場などでも安定した通信環境を提供し、ヘルスケアの分野では遠隔で検査や診断ができる機会も増えてくる。スターリンクなどを含め、利便性や生活が向上するツールはいろいろ出てくる」
―成長領域に位置付ける新事業は。
「コアはあくまでも通信で、AIなどを加えて高度な通信サービスを磨き上げることが重要になる。まずはソリューション事業を伸ばす。法人や自治体にDX活用を提案し、生産性を向上させたい。創業以来、事業を通して沖縄経済への貢献を企業理念にしてきた。新たな領域を広げ、得たもので新たな貢献をしていきたい」
(聞き手・當山幸都)
みやくら やすあき 1962年生まれ、東京都出身。早稲田大卒。90年、日本移動通信(現KDDI)入社。中部テレコミュニケーション社長、沖縄セルラー電話執行役員副社長を経て、同社社長に就任。趣味はゴルフと料理。