那覇空港の機能拡張と今後返還が予定される米軍専用施設の跡地開発を一体で進める構想「GW(ゲートウェイ) 2050 PROJECTS」の計画推進に向け、県経済界が動き出している。旗振り役を務めてきた県経済団体会議の石嶺伝一郎前議長と6月に就任した金城克也現議長が13日の推進協議会設立を前に琉球新報の取材に答え、計画の狙いや意義を語った。
(聞き手・島袋良太)
全体網羅した構想必要 石嶺伝一郎氏(県経済団体会議前議長)
―計画の狙いは。
「那覇空港から普天間基地に至る本島西海岸地域を『価値創造拠点』と位置付ける。合計800ヘクタールを超える広大な地域のグランドデザインを描き、世界に開かれたゲートウェイとして将来像の具現化を図る」
「那覇空港は新旅客ビル整備や航空産業の拡充などで世界最高水準の拠点空港化を進めたい。それだけでなく、周辺地域も一体的に考える必要がある。箱物の建設だけでは持続的、自立的発展につながらない。那覇軍港、キャンプキンザー、普天間飛行場が所在する自治体も、それぞれで跡地利用の話を進めているが、西海岸を一気通貫する計画がない。全体を網羅する構想が必要だ」
―具体的には。
「これからの議論になる。第1フェーズとしては世界のビジネス潮流を調査・研究し、沖縄の優位性やニーズ、ポテンシャルを見ながらどのような成長産業があるのか、また既存の産業をどう高度化できるかを研究する。そうした産業を支える人材の育成も検討する」
「次のフェーズとして、四つの区域にどうテーマを設定し、どういった施設が必要かを検討していく。まずはイメージとして那覇軍港を『グローバル産業エリア』、キャンプキンザーは『文化と観光の融合した国際リゾートエリア』、面積480ヘクタールにも上る普天間飛行場は『県民生活の質向上をけん引するエリア』と設定したが、あくまで仮のイメージだ。今後、所在自治体の意見なども踏まえて検討する」
「価値創造を支える四つの柱は、産業の活性化、持続的発展を支える人材の育成、空港を拠点とした交通ネットワークの形成や多様な交通機能の導入、環境配慮型のまちづくりだ」
―推進体制は。
「経済団体は県経済団体会議、沖縄未来創造協議会を共同代表とし、沖縄懇話会や那覇空港拡張整備促進連盟も(13日に発足する)協議会に入る。基地返還予定地がある那覇市、浦添市、宜野湾市にも参加を呼びかけている。事務局は有志企業による体制となる」
―民間主導を掲げる狙いは。広域調整を担う県や国との関係は。
「大胆かつスピーディーにという体制を考えると、民間主導で進めたい。そして自立型経済構築の一歩として、このプロジェクトを進めたい。もちろん基本のベクトルは民間も行政も一緒にやっていこうという考えだ」
「経済団体は以前から那覇空港と基地跡地の一体的な開発の必要性を訴えていた。プロジェクトは政府の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)にも推進が盛り込まれた。広大な敷地を更地から開発できる強みを生かし、日本をけん引するゲートウェイとして、アジアにおける沖縄の優位性が評価されたと認識している」
世界に選ばれる沖縄に 金城克也氏(県経済団体会議議長)
―政府の「骨太の方針」に盛り込まれた。計画の意義は。
「経済団体会議としては、以前から那覇空港から西海岸の一体的な整備が必要だと発言はしてきた。次代の沖縄の進化を象徴する世界に開かれた『GW(ゲートウェイ)2050構想』を掲げ、自民党の沖縄振興調査会にも5月に説明し、骨太の方針にも記載された。基地跡地を取り巻く環境の変化、アジアの中の沖縄に優位性が高まっているからだと思う。政府与党からも期待の声が多かった。日本をけん引する沖縄経済の発展に向けて着実に進めたい」
―民間主導で組織を立ち上げてプロジェクトを進める狙いについて。
「大胆かつ斬新に、柔軟な発想でスピード感を持って実行していく必要がある。『世界に選ばれる沖縄』を目指すには、産業などを世界水準で考える必要があり、民間の発想が必要だ。対象の自治体と連携を取りながら進めていきたい」
―事業化までのスケジュール感と各区域のイメージを。
「詳細はこれから調査する。基地の返還予定地ごとに産業育成や人材育成、文化の発展などをどうするかしっかりと調査する。結果に基づき、こういう絵が描けるではないかという段取りになる。ただしかし、われわれとしては2050年にはやはり解決したい。米軍基地の具体的な返還スケジュールは決まっていない。だがそれを待っているわけにもいかない。嘉手納以南の基地は日米で返還が合意されており、その準備をしておく」
―対象区域の可能性はどう考えているか。
「那覇空港から宜野湾までの西海岸地域はものすごくポテンシャルの高い場所だ。現状は沖縄の空と海の玄関口となっているが、日本における東アジアの玄関口にもなり得る。半径4千キロには東アジアのほとんどの国が含まれ、20億人の市場がある。県経済も日本の経済成長も引っ張っていける場所になれる。まさにゲートウェイだ」
―大規模な都市開発を議論する。行政との関係は。
「政府の『骨太の方針』に計画の推進が盛り込まれたということは、国はどう予算を付けるかを必ず検討していくと考えている。当然国だけではできないので、協議会でも資金的なことも考えていかないといけない。県としては産業界とそれぞれの地域が一緒に調査している段階で、計画が描かれていく推移も見守って対応を検討したいとのことだ。これだけ広大でポテンシャルの高い地域を再開発できる場所は日本に他にない。ただ、地権者の理解も得ないといけない。当然、対象施設がある3市にはそれぞれの考え方もある。協議会にも加わってもらうよう呼びかけているので、その中で議論していきたい」