有性生殖によるサンゴの再生事業を支援している「有性生殖・サンゴ再生支援協議会」が八重山漁業協同組合と協力し、同地区で育てている群体の約9割が、今夏の白化を免れた。養殖サンゴに水温対策を施すことで群体の多くで白化が防がれたとみられる。参画する日本トランスオーシャン航空(JTA)の又吉千秋氏は「危機的な状況の中で、有性生殖の重要性を伝えていきたい」と訴えている。
再生支援協議会は、JTAと水産土木建設技術センターなど県内8団体で構成。養殖に取り組む八重山漁業協同組合を技術や資金面で支援してきた。八重山漁協は今年5月、有性生殖で育てたサンゴから2代目を繁殖させる「完全養殖」の実用化に漁協として国内で初めて成功した。
有性生殖でサンゴが卵から約5年をかけて成長し、新たに約200万個を産卵するまでには、約500万~600万円がかかるという。協議会は26年度から始まる次のフェーズに向けて、参画団体や企業を拡大させる予定だ。
県内海域では夏の異常な高水温による大規模な白化が発生。八重山地域では近年、頻度が高まっており、16年、22年に続き、今年も大規模白化が起こっている。協議会の担当者は「白化で死んでしまうスピードが天然サンゴの回復スピードを上回っている」と警鐘を鳴らす。
サンゴ養殖に取り組む八重山漁協は、水深約6メートルに設置した5600平方メートルのワイヤ式棚で株を育成している。高水温の影響を避けるため、今夏はより水温の低い13メートル地点まで移動した。この取り組みが奏功し、20年から育てるサンゴは約300群体が生存している。
サンゴの植え付けには折った苗の断片を育てる無性生殖と、産卵を利用して増殖させる有性生殖がある。有性生殖は高度な技術、多くの予算が必要だが、自然環境に近い形での育成が可能だ。
(與那覇智早)