有料

「戦争への反省ない」元学徒らが批判 令和書籍の教科書巡り、声明発表 沖縄


「戦争への反省ない」元学徒らが批判 令和書籍の教科書巡り、声明発表 沖縄 特攻隊員の死について「散華」などと表現している令和書籍の歴史教科書の複写
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 文部科学省が中学校歴史教科書の検定で「令和書籍」の追加合格を発表したことを巡り、沖縄戦に動員された県内21の旧制師範学校・中等学校の元学徒らでつくる「元全学徒の会」が24日、「教科書に平和と真実を求める声明」を発表した。天皇を中心とした歴史を教える編集の趣旨や、沖縄戦の記述を「主権在民の意識がない」「戦争の美化」と批判し「歴史の事実を伝えない教科書を生徒たちに渡してはならない」と訴えている。

 令和書籍は、沖縄戦で県内21の旧制師範学校・中等学校の男女学徒が動員されたことについて「志願」と記述した。これに対し、声明は「誤りだ。学徒隊は軍命によって動員された」と否定。「自ら志願し戦死したなどと『殉国美談』にしている」と批判した。

 元学徒らは「天皇と国を守るために命をささげた当時の皇国史観と軍国主義教育の恐ろしさ」を沖縄戦の反省と教訓として語り継いできた。

 声明では「皇国史観と軍国主義教育を繰り返さないよう、その恐ろしさを次世代に伝える責務を痛感している」と結んだ。

 同会幹事の宮城政三郎さん(95)は「『大東亜戦争』と美しい言葉でごまかそうとした戦争の目的は植民地拡大のための侵略戦争だった。日本が『正しい戦争をやった』と子どもたちに思い込ませる教育が許されてはならない。戦争への反省がないことが根本的な問題で、その脈々と続く根を断ち切らなければならない」と指摘した。

 (中村万里子)


特攻隊「散華」など記述

 文部科学省が中学校歴史教科書の検定で追加合格を発表した「令和書籍」で、沖縄戦体験者や教育関係者から批判が上がっている沖縄戦に関する記述は次の通り。

 「沖縄を守るために、爆弾を持ったまま敵艦に突入する特攻作戦も行われ、二八〇〇人以上の特攻隊員が散華(さんげ)しました。沖縄攻防戦では、中学生から高校生の男女二三〇〇人以上が、志願というかたちで学徒隊に編入され、一二〇〇人以上が死亡しました。逃げ場を失って自決した民間人もいました」