沖縄の海には、昆布やワカメはありませんが、丈の短い海藻はたくさん生えています。これ、小魚や巻貝、ウニなど、色々な生き物たちのご飯になるんです。
サンゴ礁の浅い岩場で、カニが海藻をかじっていました。カニは強そうなハサミで肉食と思われがちですが、実は雑食性。ただし種類によって肉食寄りと草食寄りがいて、小型のカニはよく海藻を食べます。なにせそこらじゅうに生えていますから!
多くのカニは、その場で海藻をちぎって食べます。カニの口をよく見ると、小さな足みたいなものが動いていますね。実は、この口はたくさんのパーツが重なってできています。体の外側から中に向けて、あご足が左右3対、小あごが2対、そして歯の役目の大あごが1対。これを器用に使い分けて、ハサミでちぎった食べ物を受け取って、順番に口の中に運んでいきます。だから、すごく強そうな大きいカニも、食べ方はちょっとずつで、とってもちまちましているんです。
ちなみに、外側のあご足は目の掃除にも使います。時々口元からあご足を伸ばして、目ん玉をペロリと撫でる様子が見られますよ。
さて、夜に岩場を観察していたら、カニが海藻を収穫して持って歩く面白いシーンに出会いました。それは毛むくじゃらのケブカガニ。ハサミで海藻のかたまりをちぎって、隠れ穴まで抱えて行きます。波に洗われる海藻畑で直接食べるより、穴の中の方が落ち着いて食事ができるのかな。今夜は新鮮な海藻サラダの晩ご飯です!
Vol. 10 ケブカガニ
Pilumnus vespertilio
● 目:十脚目 Decapoda
● 科:ケブカガニ科 Pilumnidae
● 属:ケブカガニ属 Pilumnus
動画撮影:
ヒメイワオウギガニ 2018年12月7日 場所:カーミージー(浦添市)
ケブカガニ 2018年12月7日 場所:カーミージー(浦添市)
動画撮影・編集&執筆
鹿谷法一(しかたに・のりかず しかたに自然案内)
琉球大卒、東大大学院修了、博士(農学)。広島に生まれ、海に憧れて1981年に沖縄へ。専門はカニなどの甲殻類。生き物の形とはたらきの関係に興味がある。最近は、沖縄の貝殻を削って磨くシェルクラフトを行っている。
鹿谷麻夕(しかたに・まゆ しかたに自然案内)
東洋大、琉球大卒。東大大学院中退。東京に生まれ、20代半ばでサンゴ礁に興味を持ち、1993年に沖縄へ。2003年より、しかたに自然案内として県内で海の環境教育を始める。しかたに自然案内代表。手作りぬいぐるみで海を伝える、あーまんシアターも主宰。
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