沖縄で時計を見ない伊藤健太郎さんが、銀座でタイムトラベル!? 映画「ザギンでシースー!?」インタビュー


沖縄で時計を見ない伊藤健太郎さんが、銀座でタイムトラベル!? 映画「ザギンでシースー!?」インタビュー 自分のことを「晴れ男」だと思っているという、伊藤健太郎さん。スカッと晴れた気持ちのいい日にインタビューしましたが、さわやかな笑顔とシャキッとした存在感で、伊藤さん自身が周りをパッと明るくする太陽のような方でした。
この記事を書いた人 Avatar photo 饒波 貴子

公開を控えている映画「ザギンでシースー!?」は、高級店が建ち並ぶ日本の中心地、東京・銀座を舞台に繰り広げられるタイムトラベル・コメディー作品。主演の伊藤健太郎さんは、時間旅行を疑似体験したかのような気持ちになり共演者との交流は楽しく、撮影中は充実していたそうです。

本作の見どころや思い出、またジャパンプレミア上映を行なった「島ぜんぶでおーきな祭 第15回沖縄国際映画祭」(2023年4月開催)に参加した感想を聞きました。

聞き手:饒波貴子(フリーライター)

レトロ感あるファンタジー作品に挑戦

―沖縄にようこそいらっしゃいました。国際通りでレッドカーペットを歩いていかがでしたか?

コロナ禍を経て、大々的に開催するのは数年ぶりと伺いました。本当にたくさんの観覧者の方が集まって、いろんな声を掛けていただきました。健ちゃん、伊藤ちゃん、そして役名で呼んでくださるなど温かい方々ばかりでとてもうれしく、楽しい時間でした。

―沖縄らしい快晴で、伊藤さんはじめみなさまを歓迎したと思います。

僕の中で沖縄は、雨のイメージが少しあったんですよ。到着した日が土砂降りで心配でしたが、レッドカーペットの日は晴れてよかった! 実は自称「晴れ男」なんです。

―この素晴らしい天気は、伊藤さんのおかげだったんですね!

分からないですが、とても晴れたのでよかったです(笑)。

―ジャパンプレミアの舞台あいさつは、どんな気持ちですか?

コロナ対策が少しずつ落ち着いて、声を出せることはすてきな事だなと感じてきました。舞台の上やレッドカーペットの中央にいたりすると、みなさまの歓声からパワーをいただけるんですよね。どれだけ疲れていても、アドレナリンが出ます。普段はスクリーンやテレビを通してつながることしかできないので、直接お会いできる機会はとても大事です。

―見る側もそうです。実際に伊藤さんにお会いできるのは貴重です。今回は楽しい新作「ザギンでシースー!?」のお披露目でした。タイトルからチャラい業界系の話かと思いましたが(笑)、タイムトラベラー的なファンタジーで、電話ボックスやテレホンカードなど懐かしいアイテムも出てきて楽しかったです。

全体的になお話がファンタジーなので、その部分を楽しんでもらいたいと思っています。テレホンカードは、小学生のころに使っていました。テレホンカードを知っている最後あたりの世代が、僕らの世代かもしれません。

―撮影現場はどんな雰囲気でしたか?

共演させていただいた方は面白い方が多くて、現場も笑いが多かったです。岩城滉一さんが現場をすごく和ませてくれる方なんですよ。芸人さんも出演していますし、現場ではよく笑って本当に楽しかったです。

©2023 映画「ザギンでシースー!?製作委員会」
©2023 映画「ザギンでシースー!?製作委員会」

―90年代にタイムスリップしたりしますが、セットでリアルに再現していたのでしょうか?

実は今もある場所を使わせてもらったりしました。純喫茶だったり、なるべく他を映さないようにして当時の雰囲気がある所をピンポイントで映るようにしたり。パーテーションみたいなもので、自動販売機などを隠したりもしましたね。そして古い車を一台置いておくだけでも、雰囲気が変わったりするんですよ。スタッフさんたちが昔から残っている場所を探しに行ってくれました。銀座のど真ん中で撮っていたので。最初は大丈夫かな~と思いましたが、通行人の方に協力いただいて撮影を進めました。

―面白い! 現在の銀座で昔の雰囲気を再現できるんですね。

できるんだな~って思いましたよ。完璧にできたかどうかは分からないですけど(笑)。

―高級店が多いのが銀座のイメージですが、普段行くことはありますか?

歯医者さんくらい(笑)。他は全然行かないですね。夜の銀座は自分にはまだまだなじみがない世界、という感じです。クラブ街で撮影させてもらったんですけど、ビシッと着物を着たママと思われる女性がいて見ていてカッコよかったです。本当にこういう世界があるんだな~と思っちゃいましたね。

―ヌンチャクのようなものを使うアクションシーンもありました。

アクションシーンは大好きで、武田鉄矢さんが昔やられていたハンガーヌンチャクの動画などを見ながら、練習しました。椅子を使って戦った時は、ジャッキー・チェンさんを参考にしました。ジャッキーはベンチのようなものを使うんですが、そういうシーンからヒントをもらいました。アクションは前から好きなので楽しかったですし、今後もいろいろ挑戦していきたいです。

©2023 映画「ザギンでシースー!?製作委員会」
©2023 映画「ザギンでシースー!?製作委員会」

―作品を通して印象的だったエピソードを教えてください。

岩城滉一さんとご一緒させていただいたことです。1人の男の子として岩城さんのファンなので、本当にうれしかったですよ。撮影の合間にはいろんな話をしてくださって、その時間は何とも言えないくらい楽しかったですね。ああいうおじちゃんになりたいな、と思わせる代表的な男性だと思うので自分の中で貴重な時間を過ごさせていただきました。

―大御所・泉ピン子さんも出演していますね。そしてヒロイン役の暁月ななみさんは、沖縄出身の俳優!?

そうです。暁月さんとは初共演でお芝居の経験はあまりないと聞きましたが、とても勉強熱心な方という印象です。和楽器で演奏するロックバンドのメンバーだそうです。

―新人という雰囲気、暁月さんからは感じませんでした。

現場でも堂々としていて存在感がありました。演技を始めたころは萎縮してしまう方が多いと思いますが、そんな感じはなかったです。「演技はほぼ初めてなんです」と聞いてびっくりしたくらい堂々とお芝居されていたので、肝の座ってる方なんだなと思いました。

沖縄国際映画祭にて本編上映後、関係者が舞台あいさつに登壇。(右から)金森正晃監督、主演の暁月ななみさん・伊藤健太郎さん・岩城滉一さん、主題歌を担当した華原朋美さん ©沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース
沖縄国際映画祭にて本編上映後、関係者が舞台あいさつに登壇。(右から)金森正晃監督、主演の暁月ななみさん・伊藤健太郎さん・岩城滉一さん、主題歌を担当した華原朋美さん ©沖縄国際映画祭/(株)よしもとラフ&ピース

―思い出のシーンを教えてください。

まずはアクションシーン。そして電話ボックスのシーンです。3人で入るのでギュウギュウで大変で、どうやってもあの入り方しかできないんですよ。入る順番を変えると上手く閉まらず、あの形でしか入れない。岩城さんがリュックを背負っていたりするので、決まった形でしか収まらないんです。どうやったら入れるか・・・というのを探す時間が少しあって、パズルをやっているみたいな感覚でした。

―入る位置を決めるのが大変だったんですね。実際にある電話ボックスですか?

大変というか、面白かったです(笑)。実際に今もあって、日本初の電話ボックスだろうという話を聞きました。

役者というのは不思議な仕事!?

―2014年に役者デビューした伊藤さん。約10年で数々のドラマと映画に出演されてきましたが、この作品はどんな位置付けになりますか?

個人的には、すてきな出会いをたくさん設けてくださった作品、という部分があります。内容としては、過去・現在・未来にタイムスリップして出来事を変えたりいろいろな行動がありますが、結局は大きく変わることはあまりないんじゃないのかなと考えたりしました。瞬間的に自分が感じてきたことや行動してきたことは、大きく変えてもあまり意味がない。そんな風に思えましたし、「今を大事に生きること」が本作から伝えたいメッセージだと思っています。

―説得力があります。タイムスリップできるといいな、と単純に憧れてしまう気持ちもありますけど。

僕もそう考えます(笑)。でもタイムスリップしてプラスのことを得るより、リスクの方が大きい気がして・・・そう考えると意味がないかな~って。疑似体験したからこその感想です(笑)。他にも作品の規模を含め、いろいろな経験ができた現場だったと思っています。お芝居の部分だけを見る現場が多いですが、本作はさまざまな部分を見ることができたと振り返って感じます。岩城さんとの出会いも大きかったですし、めちゃめちゃ刺激があり学ぶことが多い作品でした。

―演技の勉強は普段やっていますか?

勉強と思ってやっていることはありません。生活の中で当たり前のようにやっていることを還元できるのが役者の仕事、だと思っているんです。勉強と思ってやると僕は続けられないですよ(笑)。例えばこういう場所でごはんを食べていて、目に入った近くの人が面白い動きをしていたら、「いつか使ってみよう」とか思うんですよ。映画を見てカッコいいと思える人物がいたら、「僕もやってみようかな」とか。意識しているというより無意識の中でやっている感覚でいる、そんな毎日です。

―自分とは違う人を演じるのがお仕事ですもんね。

不思議な仕事ですよね。自分のことを考える時間より、自分じゃない誰かのことを考えている時間の方が長いので。面白いな~と思いますね。

―そこを楽しめるのが伊藤さんの魅力ですね。まだお若いのに、これからどういう俳優さんになっていくのか・・・ますます素敵になっていくのが楽しみです。

時間があればサーフィンしたい

―沖縄について教えてください。初来沖ではないですよね!?

基本的には仕事が多くて、何度か来させていただいています。ミュージックビデオの撮影で来ましたし、5年くらい前の作品で沖縄国際映画祭に参加したこともあります。でも仕事で東京に戻らなければいけなくて、舞台あいさつを終えた後に帰ったんです。なので、レッドカーペットを歩くのは今年が初でした。

―沖縄の印象を聞きたいですが、来てもハードスケジュールでとおっしゃる方が多く・・・

そうなんですよね。意外に満喫できていない面もありますが、海が大好きな僕は到着直前に飛行機の窓からきれいな海が見えた時、それだけでうわ~ってテンション上がります。本当は海に入って、ゆっくりサーフィンしたいと思ったりしますが、なかなかそんな時間が持てません。でも沖縄は本当に大好きで、時間がゆっくり流れている感覚になれるんです。東京にいると常に時計を気にしなきゃいけない生活だったりするんですけど、沖縄に来るとそれがなくて。プライベートで来た時は、一切時計を見ずに気付くと時間が過ぎていることもあり、それが自分に合っているんですよね。前に島に行った時、海沿いにポツンと食堂があって座ってみたんですよ。おばあちゃんしかいないような場所だったのですが、三線の音が流れてきて「は~っ」て力が抜けました。前からずっとここにいるような気持ちでしたよ(笑)。その経験をして、すごくすてきな場所だな~と感じました。

―好きな沖縄の食べ物を教えてください。

残念ながら今回もすぐに帰りますが、ちょっとだけ沖縄料理を食べました。大好きなソーキそばもしっかり食べましたよ。それから海ぶどうも大好きで、早起きしてスーパーに行き家用に買っちゃいました。お酒のつまみだけではなく、サラダに混ぜたりして食べるのが好きです。帰りの空港でも買っちゃうかもしれません(笑)。

―最後にメッセージをお願いします。

映画もドラマも、お声掛けいただけたら出演していきます。2023年は沖縄国際映画祭に弾丸で来させていただきましたが、レッドカーペットのあの近い距離感で、地元の方を中心に他県の方々ともつながることができました。みなさん、温かい方ばかりでした。次は遊びに来たいと思いますので、また温かく迎えてくださったらうれしいです。

インフォメーション

『ザギンでシースー!?』

2023年/日本
監督:金森正晃
出演:伊藤健太郎、暁月ななみ、岩城滉一、熊田曜子、あべこうじ、泉ピン子 ほか

饒波貴子

 のは・たかこ 那覇市出身・在住のフリーライター。学校卒業後OL生活を続けていたが2005年、子どものころから親しんでいた中華芸能関連の記事執筆の依頼を機に、ライターに転身。週刊レキオ編集室勤務などを経て、現在はエンタメ専門ライターを目指し修行中。ライブで見るお笑い・演劇・音楽の楽しさを、多くの人に紹介したい。