沖縄戦の悪夢をアニメで描く 平和教育に必要な作品群(1)<アニメは沖縄の夢を見るか>


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挿絵・吉川由季恵

 これまで沖縄は多くのアニメで物語の舞台となってきたが、そこにはどういう契機や特徴が読み取れるだろうか。また沖縄の状況や1990年代から続く沖縄ブームは、アニメにどのような影響をもたらしているだろうか。この連載では毎回具体的な作品を取り上げながら、沖縄とアニメの関係について考えてみたい。

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 沖縄が登場するアニメとしてまず思い浮かぶのは、沖縄戦の悪夢を描いた一連の作品群ではなかろうか。1980年代に相次いで製作された『対馬丸 さようなら沖縄』(1982)、『白旗の少女 琉子』(1988)、『かんからさんしん』(1989)は、いわば「沖縄戦長編アニメ3部作」と位置付けられる。

 いずれもプロデュースや制作は本土側で行われ、監督も本土から起用されたが、原作は沖縄の作家によるものだ。また『対馬丸―』と『かんから―』では、製作にあたって沖縄から多くの協力や支援が行われた。

 この3作は、沖縄の自然の中で明るい笑顔を見せていた子どもたちが戦争に巻き込まれ、さまざまな不条理や死に直面するという物語構成も共通している。こうした構成は『はだしのゲン』(1983)や『ジョバンニの島』(2014)にも見られる平和教育アニメの定番だが、加えて沖縄戦では戦争以上に恐ろしい日本兵が白くつり上がった眼で登場し、日本刀が権力と残酷さの象徴となっている。

 1990年代にも、シネマ沖縄が短編『石の声・沖縄戦マラリア地獄の記憶』(1992)を手掛け、陸軍中野学校出身者による波照間島民の強制移住の悲劇が描かれた。また東宝は『ひめゆりの塔(命ど宝物語)』(1995)を製作し、西村知美が声優として参加している。近年ではNHKのドキュメンタリー『あの日、僕らは戦場で~少年兵の告白』(2015)に、本島北部でゲリラ戦やスパイ活動に動員された元少年兵の証言に基づくアニメが組み込まれていた。

 日本のアニメは、「少国民」の戦時教育を目的とする国策動画によって技術水準が上がり、戦後の発展の基礎となった経緯がある。それを考えると皮肉な話だが、平和教育に必要と考えられる限り、今後も沖縄戦を描いたアニメは製作されるだろう。ただし作っても見てもらえなければ意味がない。前述の作品のうち『白旗の少女―』と『ひめゆりの塔』は上映機会が少ない上にDVDも未発売のため、沖縄でもあまり知られていないのではないか。

 その一方で、沖縄戦とは無関係に見えるアニメにも、しばしば沖縄戦の影が指摘できる。この点については次回以降の連載で改めて取り上げたい。
 (岡山大学大学院非常勤講師)

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 沖縄を舞台にしたアニメ作品を紹介しながら、基地問題や沖縄戦などアニメが描いた「沖縄」の姿を沖縄映画史研究家で岡山大学大学院非常勤講師の世良利和さんが伝える。