女子キャラ描く「水着回」 上っ面なぞる沖縄ブームに連動<アニメは沖縄の夢を見るか>(8)


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挿絵・吉川由季恵

 ご存じのように日本のアニメには学園モノが多い。これにはターゲットとなるファンの年齢層だけでなく、物語の区切りやすさや人間関係の設定しやすさも影響しているのではないか。またS・ネイピアは、日本社会に占める学校制度の比重の大きさを指摘している。その学園アニメでは文化祭、バンド、部活、対外試合といったイベントが定番だ。中でも欠かせないのが修学旅行や合宿で、行き先としてしばしば沖縄が舞台に選ばれてきた。

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 一方、アニメシリーズには「水着回」と呼ばれるお約束の回があり、ビーチやプールを舞台にビキニ姿やスクール水着の女子キャラが描かれる。そして沖縄への旅行や合宿はこの水着回に利用されることが多い。たとえば『GTO』(1999―2000)では石垣島での移動教室というエピソードがあり、ビーチでのシーンが描かれていた。

 『斉木楠雄のΨ難』(2016―18)では修学旅行、『魔法少女特殊戦あすか』(2019)では臨海学校の行き先が沖縄で、いずれも女子キャラの水着姿が強調される。『アクセル・ワールド』(2012)でも沖縄への修学旅行中にヒロインの黒雪姫がビーチで水着姿になる。また恋愛シミュレーションゲームをwebアニメ化した『Bonjour♪恋味パティスリー』(2014―15)では製菓学校の合宿先が沖縄で、女子キャラやイケメンキャラが水着で登場する。

 こうした「沖縄=水着回」のアニメを数え上げればきりがないが、それを常態化した作品が『はるかなレシーブ』(2018)だった。物語はヒロインの大空遥が東京から母の郷里である沖縄に単身引っ越して来たことで始まる。うるま高校に転校した遥は祖母の家で同い年の従姉妹・比嘉かなたと暮らしながら、ビーチバレーを通じて仲間やライバルと出会うのだ。ただしかつての『アタック№1』(1969―71)のようにシリアスなスポ根調ではなく、ギャグがふんだんに盛り込まれ、魔球や必殺技は登場しない。

 ちなみに本作は登場人物のほとんどが女で構成された“ガールズアニメ”で、「けいおん!」(2009―10)や「のんのんびより」シリーズ(2013―)と同じく男の影は非常に薄い。しかも場面の大半は海辺にあるビーチコートでくり広げられ、ヒロインたちが毎回ビキニ姿で練習や試合に臨み、そのバストやヒップが強調されていた。沖縄という舞台は「毎日が水着回」という設定のために選ばれており、ゆるゆるとした展開の中で沖縄ブームの上っ面をなぞりながら、女子高生の日常と友情が描かれている。
(世良利和、岡山大学大学院非常勤講師)