那覇で続くフラワーデモ「社会は変わる」 性暴力に苦しんだ女性たちが語ること


この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬
フラワーデモで使用しているプラカードとブーケ(実行委員会提供)

 花を手に、性暴力撲滅を訴える「フラワーデモin沖縄」が11日、那覇市の県民広場で開かれた。33人(主催者発表)が参加し、無言でプラカードなどを掲げる「サイレントスタンディング」を行ったほか、スピーチでは自身の性被害を語る人や刑法の性犯罪規定の改正に向けた思いを訴える人たちが声をつないだ。集まった人たちが抱えてきた理不尽な体験への悩みや怒り、訴えに耳を傾けた。

 午後7時をまわり、街灯も消えた広場。花を片手に人々が集まってきた。広場の花壇の前に立って「性暴力を許さない、私たちは黙らない」「#metoo #withyou」と書かれたプラカードを掲げる人も。大通りを行き交う人々に向けたサイレントスタンディングが始まった。

 デモの後半は、広場でスピーチが続けられた。「どなたかお話ししたい方はいませんか?」司会の呼び掛けにも時折静けさが続く。話す人がいない時でも沈黙を共有し、無理に話を促すことはない。

「フラワーデモin那覇」に集まった参加者ら=11日夜、那覇市泉崎の県民広場

何度もよみがえる幼少期の記憶

 数人が話し終えた後に話し始めた30代の女性がいた。幼少期に通っていた習い事の先生に体を触られる被害にあった経験を語り始めた。大学生の時に記憶がよみがえり、カウンセリングを受けた。当時気持ちは落ち着いたと思ったが、最近また思い出すことがあるという。

 「自分が悪かったのか」と悩んだ末に専門家に打ち明けた。「声を上げられない人にやっている」と言われ、違う見方ができるようになった。ある時、習い事の教室の跡を見に行こうと思い訪ねたところ、教室はまだ続いており、生徒も募集していた。「性暴力がなんでもない、当たり前のことのように扱われている」と感じたが、昔のことでどうすることもできなかった。

 そんな中で知ったのがフラワーデモだった。背中を押されるように、友人に自身の経験を話したところ、友人も自分の被害を話してくれたり、「相手が悪い」と受け止めてもらえたりした。「悔しい思いをしてきたが、社会は変わってきている。フラワーデモでこうして話ができることに勇気をもらった。性暴力に向き合って活動している人たちがこんなにいると分かったことが力になった」と締めくくった。

 他の参加者からは拍手が起き、「あなたは悪くないよ」という声が続いた。

 

いたるところにある性暴力

 デモには、中学生の時に教職員から受けたわいせつ被害をきっかけに自ら命を絶った女性の母親の姿もあった。昨年から何度か姿を見せるようになった。「娘の代わりに来た。教員によるわいせつ被害をなくしたい。何から始めれば良いか分からないが、できることから始めたい。フラワーデモに参加したいと思う」。時折こみ上げる気持ちを抑えながら言葉をつないでいた。

 社会運動が活発な沖縄。運動の現場での被害についても、フラワーデモではこれまで何度か言及がある。「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の共同代表や強姦救援センター・沖縄(REICO)代表を務める高里鈴代さんがこの日マイクを取った。「運動の中でも実際に被害はいっぱい起こっている。セクハラに遭った女性がSNSに書いたことがある。主催者には絶対そういうことは許されないと言った」と振り返った。 

国際女性デーに合わせ開催されたフラワーデモ。花を手に性暴力の撲滅を訴える(左から)宮城朋子さん、高里鈴代さん、上野さやかさん=2020年3月8日夜、那覇市泉崎の県民広場

嫌だと思うことされるのは暴力

 フラワーデモの始まりは、2年前に性暴力の罪に問われた男性に対する無罪判決が各地裁で相次いだことに抗議したことがきっかけだ。オンライン上も含め、全国各地で毎月開かれてきた。沖縄では19年8月に始まり、20年3月にいったん終了したが、希望者からの声を受けて11月に再開している。

 高里さんは、性犯罪規定をめぐる刑法改正について「脅迫や暴行要件」を撤廃するかどうかが議論になっていることを紹介した。「脅迫しなくても巧妙な方法で暴力がなされている」と指摘する。

 この日のデモで語った女性のように幼少期の性被害が大人になってからよみがえる人も多く「おかしい、嫌だと思っていることをされることが実は暴力だが、そこまでいっていない」と現状に触れた。

 札幌市で28年前に受けた教員からのわいせつ被害を訴え続けている事例も挙げ「被害者は他に同じ思いしている人がいると思い必死にたたかっている。法律の改正までいけるように、沈黙している人が話せる人が誰かそばにいられるように。私たちがそんな人になれるように(フラワーデモ)を続けて行けたらと思っている」と参加者に語りかけた。

再開されたフラワーデモで花やプラカードを手に、道行く人へサイレントスタンディングデモを行う参加者=20年11月11日、那覇市泉崎の県民広場

伝え続けるために

 デモを主催する上野さやかさんは、新型コロナの影響でフラワーデモが開催できない間に、杉田水脈衆院議員(自民)や東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長らの女性蔑視発言が相次ぎ、悔しい思いを抱いていた。

 とりわけ「女性はいくらでもうそをつけますから」という杉田氏の発言は、フラワーデモをサイレントスタンディングで再開する決定打にもなった。「その場で何かできなくて苦しかった。森さんの発言は国際問題だからと大きなニュースになった。私のたたかっている現場では、性暴力が身近な日常の中で起こるから苦しい。世界に注目されないと認められないことに悶々(もんもん)としている」。

 コロナ後に再開したフラワーデモは、SNSで直前の告知になることが多い。話す場を求めている人たちがいる一方で、人を集めることには感染防止対策も必要となる。主催者としては、毎回ぎりぎりまで熟慮を重ねての判断を迫られる。それでも「コロナでなかなか開催できないこともあるが、フラワーデモをやることで、日常にある性暴力に対して、力を合わせて、伝え続けていかないといけない」と語る。

 刑法の性犯罪規定の改定を目指して始まったデモは、新型コロナの影響で集会などが開かれにくい状況にある中、性暴力の被害者らが安心して語れる場所として定着しつつある。4月も同じ場所で開催する予定だが、参加できない人にも「自宅など遠くから同じ日の同じ時間に思いを寄せてほしい」と呼び掛けた。

(慶田城七瀬)

 

<性暴力被害の電話相談窓口>

 性暴力被害を受けた際の主な相談窓口は次の通り。

 

◇沖縄県性暴力被害者ワンストップ支援センター(with you おきなわ)

#8891 もしくは、098-975-0166

※24時間 365日体制 (台風時には閉所します)

 

◇強姦救援センター・沖縄REICO

098-890-6110 ※水曜日は午後7時~10時、土曜日は午後3時~6時

 

【おすすめ記事】

<杉田氏発言を問う・上>うそをつくのは加害者 性暴力に無理解 宮城朋子(フラワーデモin沖縄実行委員)

「女性力」に違和感、メディアの意識はどうなの?記者が一緒に考えた<ウェブセミナー「『女性力』の現実」取材の現場から・詳報>

眠る場所ない少女たち…沖縄社会の暴力「ゆいまーる」では救えない 琉球大教授・上間陽子さん〈ゆくい語り 沖縄へのメッセージ〉36

性暴力なき社会へ、花片手につながる思い 沖縄各地で最後のフラワーデモ