prime

宅配専業「ゴーストレストラン」の進撃 経費圧縮、ITの強み駆使<変革沖縄経済>25


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
デリバリー専業のゴーストレストランを開店したスペアミントの山里將太代表=17日、那覇市

written by 沖田有吾

 多くの飲食店が、従来の店内飲食に加える形でデリバリー(配達)に取り組む一方、客席を設けず宅配専業で取り組む、アメリカ発祥の形態「ゴーストレストラン」も増加している。内装などの初期投資が少額で済み、接客やレジなどの人件費が必要ないため、ランニングコストも抑えられる。コロナ以前から海外で増えていて、日本でもコロナ禍で成長した中食需要に応えて増加しているという。

 システム開発や電子商取引(EC)事業を手掛けるスペアミント(那覇市、山里將太代表)は、19日から那覇市東町の元弁当店で、デリバリーのみに応対するゴーストレストラン専門店を立ち上げた。健康をテーマに、サラダ専門の「インサラータ」と、麻婆(マーボー)料理専門の「麻龍包(マーロンポウ)」というオリジナルの2ブランドを手掛け、近くオーガニック食材を用いたブランドも追加する予定だ。

 山里代表は「アメリカで盛んになっていることを知り、市場の成長性を見て数年前から進出を考えていた。コロナに関係なく参入をしようと思っていた」と話す。昨年6月、ゴーストレストラン事業部門を社内につくり、8月にウーバーイーツの県内進出が決定してから準備を加速させた。

 メニュー開発や調理、飲食店運営のノウハウは、飲食店「バルコラボ」を経営する琉球アスティーダスポーツクラブや、知人の料理人の協力を受ける。味や品質は料理の専門家が作り込んで開発する。実際に販売する際にはアルバイトでも調理できるように、手順を厳格にマニュアル化している。

 ITという「畑違い」からの挑戦的な参入に映るが、強みを生かす戦略がある。ネットマーケティングや検索エンジン最適化(SEO)、地図エンジン最適化(MEO)の技術などを応用して、ウーバーイーツの検索順位対策をしていく。インフルエンサーマーケティングなども独自で行える。2003年から取り組んでいるEC事業のノウハウも生かしていく計画だ。

 価格帯は、配送手数料込みでインサラータが千円前後、麻龍包が1400円前後だ。初期投資や人件費、家賃などを大幅に圧縮でき、最初からコストと利益を逆算してデリバリー専用のメニューを開発できることから、レストランが同品質のメニューを提供する場合よりも価格競争力があるという。

 1ブランド当たりの売り上げはリアル店舗よりも少ないと想定するが、一つの設備でバーチャルな店舗を複数開くことが可能なため、売り上げの積み上げが期待できるという。反応を見て思わしくなければ、すぐに次のブランドに乗り換えられるスピード感もある。初年度は1千万円の売り上げを目指す。

 今後、県内でさらに利用者が増えることを見越して、他のデリバリーサービスとの提携も視野に入れている。山里代表は「ECを始めた時も誰が使うのかと言われたが、今ではごく普通になっている。ゴーストレストランも5年もすれば当たり前になる。家でレストランの味を楽しめるという魅力が伝われば、コロナが収束した後も間違いなく伸びる」と断言した。

(おわり)

【関連記事】
▼来年元日は既に満室「百名伽藍」の逆転発想
▼プライベート機と独立ヴィラで3密とは無縁「ジ・ウザテラス」
▼ハイアット、星のや…ブランドホテル進出の商機と懸念
▼「体力持つか…」老舗・沖縄ホテルを襲うコロナの逆風
▼脱観光業「宿泊客ゼロでいい」ヤンバルホステルは人生を提供する