県民の反対、軟弱地盤、高額工費…米国でも辺野古新基地に疑念 普天間返還合意25年


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埋め立てや護岸工事が進められる新基地建設現場=2020年9月3日午後、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の返還合意から12日で25年を迎える中、移設先となる名護市辺野古の新基地建設工事は、軟弱地盤の発覚で工期や工費が大幅に延びる見通しとなった。県民の反対も根強い中、米側からも新基地の実現や運用に悲観的な見方が出始めている。だが、辺野古移設に「並々ならぬ気持ちを持っている」菅義偉首相の下、地元と国の議論の一致点は見当たらず、返還の実現は泥沼化の様相を呈している。
 
「完成する可能性は低そうだ」

 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が3月に発行した2021米会計年度の米国の軍事力に関する報告書は、新基地の完成を困難視した。

 CSISは昨年11月の報告書でも同様に記述。軟弱地盤の存在発覚など移設計画の問題が相次ぎ「完成時期は2030年まで延び、費用も急騰している」と基地建設を疑問視した。

 米会計検査院(GAO)が今年3月に出した米連邦議会宛ての報告書は、新基地建設に関し「地元の反対と環境分析によって大幅に遅れている」と説明。専門家の指摘を引用し「沖縄のような地域での反対の程度を考えると、政治的に持続可能ではない」とも記し、持続可能性に疑念を示した。

 こうした中でも、日本政府が移設工事を進める方針は変わらない。政府高官の一人は、移設計画が日米双方で政権交代を経ても変わっていないことに触れ「党派性を問わない問題だ」との認識を示す。中国の台頭に伴う安全保障環境の変化を背景に「一日も早く進めるしか道はない」とする。

 だが、米側の懸念は工事の完成や地元の民意にとどまらない。

 17年のGAO報告書は、新基地建設への日本政府の多額な投資が、米側に対し代替施設の滑走路の問題が解決されなくても普天間飛行場を返還せよという圧力になる可能性があると指摘した。もし代替滑走路の問題が解決されないまま返還となった場合、国防総省のミッションの障害となり、機能を維持できないか、より高額な費用が必要となるなどと、軍事上の具体的な問題点を列挙した。

 辺野古新基地建設事業は軟弱地盤の改良という技術的課題だけではなく、完成後に運用主体となる米側の強い懸念をも引き起こしている。

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