「政府は沖縄無視、知事の姿勢は弱い」吉元・元副知事に聞く 普天間返還合意25年


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米軍普天間飛行場の返還が合意されてから25年を振り返る元副知事の吉元政矩氏=3月24日、那覇市

 米軍普天間飛行場の全面返還合意から25年を迎えるのを前に、当時の大田県政で副知事を務めた吉元政矩氏に話を聞いた。大田県政は段階的に全基地を撤去する「基地返還アクションプログラム(AP)」をまとめた。

 

 Q.返還合意から25年を迎えるが実現していない現状をどう捉えているか。

 「日本政府の沖縄無視だ。2019年2月24日の県民投票であれだけ意思を表明したのに無視されている。他の都道府県で住民投票の結果を日本政府が無視したら全国に反発が広がる。沖縄が無視されたら広がらない。差別がある」

 

 Q.基地返還APはいつから構想していたか。

 「革新分裂の問題に対処するため、県庁を辞めて県民運動の統一に走り、大田昌秀氏を説得して知事選に担いだ時から、目的は21世紀に平和な沖縄をつくることだ。知事直結で働く政策調整監として県政に入り、職員数人のチームを立ち上げて策定に取り組んだ」

 

 Q.大田知事は米軍基地用地の代理署名も拒否した。

 「最初から最後までノーを貫いて負けた。負けることを前提に、本当にこれが地方自治かと問題を投げ掛けて地方自治を確立する狙いがあった。裁判は負けたが、国は法律を改正せざるを得なくなった」

 

 Q.玉城デニー知事は「当面全国の米軍専用施設の50%以下を目指す」という数値目標を日本政府に求める予定だ。どう見るか。

 「50%の中身を県民に説明できなければ政治的に通用しない。むしろマイナスだ。本気ならプロジェクトチームを作って2年かけて具体的な計画を作り、次の知事選で絶対に実現する課題として在沖海兵隊の撤退を大胆に言うべきだ」

 

 Q.基地返還APは実現しなかった「絵に描いた餅」と言う意見も玉城県政内にあるが、どう思うか。

 「堂々とAPを示した結果、日米政府が驚いて基地問題をなんとかしないといけないと考えるようになった。APが動かした。結果的には日米が勝手に特別行動委員会(SACO)で合意し、普天間飛行場の返還を大義名分にして新しい基地を造ることにした」

 

 Q.日米安保を肯定しているという基本姿勢を共有して交渉する姿勢はどうか。

 「沖縄の過去を全部帳消しにする行為だ。命懸けで復帰運動をし、復帰後も県民は過重負担だとずっと反対してきた。玉城知事の姿勢は抽象的で弱い。県内をまとめて初めて日本政府への要請に迫力が出る。米軍基地問題に一番詳しいのはウチナーンチュだ。なぜ県が前に出ていかないのか」

 

 Q.基地従業員の雇用問題に配慮して海兵隊撤退の明記を取り下げたことについてはどうか。

 「副知事だった時、同じく雇用に関する議論はあった。基地返還に伴う不安の声が当然出る。全駐労の大会に呼ばれた際『解雇された場合は居住の市町村ごとに採用させる』と言った。現実に県が考えていたことだ。市町村の財政が足りなければ、県政が雇用を守る立場で動いて国から引き出せばいい。アイデアはいくつも出せるだろう」
 (聞き手・明真南斗、梅田正覚)

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