【識者談話】玉城知事、ジェンダー平等への理解追いつかぬ部分も 矢野恵美・琉球大院教授


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矢野恵美氏(琉球大法科大学院教授)

 玉城デニー知事のインタビュー録を読むと、ジェンダー平等へ向けた意欲は高いが、理解が追い付いていない部分もあるように感じた。知事は就任後、「女性力・平和推進課」を設置した。女性の管理職登用が重要だと話すが、これは『女性も男性並みに働き、女性が頑張る』という話ではない。

 1981年に女子差別撤廃条約が発効して学校で家庭科が男女共修になって約40年がたつ。知事は「台所に立つのは苦ではない」として、妻が料理をしていると「何か俺やることある?」と言うことがあることを紹介した。これはいまだに家庭の台所に立つのは女性の仕事との意識が根底にあり、男性は『お手伝い』をするという感覚から抜け切れていない。

 現在の日本の男性は、家事育児介護を妻任せにすることを前提とした働き方になっている。女性に変革を求めるのではなくて、男性の働き方を変え、誰もがワーク・ライフ・バランスを実現できるようにする必要があるという根本的な理解が必要だ。男性も育児休業を取らなければ、その家庭が取れる育児休業を短くするなどの北欧型制度の導入も有効だろう。

 県は20年度までに女性管理職の登用率を15%にする目標を掲げたが、人口比で考えたら本当は50%があるべき姿だということも忘れないでほしい。

 ジェンダー先進国では女性の代表が多くいる。日本でも女子高で役職が一向に決まらないという話は聞いたことがない。日本では男女がいる場ではあまり女性に機会が与えられてこなかっただけで、女性もそれが当たり前だと思いこまされてしまっている。

 業務や分野によっては職員の男女比に偏りが見られるのは仕方がないと言うが、なぜその専門職の性別が偏っているのか、本当にその性別でなければできないのかを丁寧に検討してほしい。災害に関する分野では、これまで女性やセクシュアルマイノリティーの視点が欠けていたことが問題となっている。

 リーダーが変われば社会も変わる。知事の目指している方向には大いに賛同できる。変わるべきは差別する側、つまり男性の方だということを理解して施策を進めてほしい。
 (ジェンダー法)

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