米半導体の沖縄進出、日本政府意向で消える 復帰前 細田元官房長官明かす


社会
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 1972年の沖縄の日本復帰前に米国の大手半導体メーカーが、沖縄での拠点開設を計画していたことが2日、分かった。計画は、国内の製造業を保護しようとする日本政府の意向で頓挫したという。当時、通商産業省(現・経済産業省)で外資政策に関わった細田博之元官房長官が本紙のインタビューに証言した。元琉球政府関係者も計画の存在を認めた。製造業の誘致は、5次にわたって続いた沖縄振興計画で課題とされてきた。沖縄振興に関わる識者は「日本政府が沖縄の権益より国内産業の保護を優先したことになる」と指摘した。

【インタビュー詳報】外資進出を止めた理由は…

 細田氏や元琉球政府関係者の証言によると、沖縄進出を計画していたのは、米半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI、本社・テキサス州ダラス)。沖縄の復帰を前に100%出資の新会社設立を琉球政府に申し入れていた。

 琉球政府の外資政策に関する諮問機関は、成長分野になり得るとして情報通信・電子産業の外資導入を促進する意見が根強く、同社の進出を強く推した。

 通産省も当初、自由貿易地域(那覇市西)での拠点開設を許可していたが、復帰までに方針を転換し、進出計画は立ち消えになったという。

 細田氏は「彼ら(TI)は沖縄に投資しようとしたのではない。沖縄を足がかりにして東京や大阪に進出しようという意図があった」と背景を説明。「日本のコンピューター産業を守るという議論が(通産省内で)あった」とし、NECや東芝、日立、富士通といった国内の半導体メーカー保護のために計画を受け入れなかったと明かした。
 (安里洋輔、梅田正覚)

 

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