「結果を厳しく受け止めている」。那覇市議選の投開票日から一夜明けた12日、城間幹子市長は報道陣に対し、厳しい表情で選挙結果への受け止めを語った。市政与党で、「オール沖縄」を前面に出して選挙戦を展開した共産から2人が落選し、保守中道勢力の政治団体「新しい風・にぬふぁぶし」も低調な結果に終わった。保守革新の幅広い政治勢力の結集を掲げてきた「オール沖縄」。その象徴のような2政党・団体の苦戦は、オール沖縄の退潮を印象付けた。
市政与党には当初から暗雲が立ちこめていた。定数40に対して、候補者を擁立できたのは全員当選しても過半数を確保できない19人。城間市長は選挙戦は議員らに任せ、自身は積極的には関与しない姿勢を示してきた。関係者内部から「司令塔」としての役割を果たそうとしない市長の姿勢に不満も漏れていた。
関係者は来年の市長選に向け、「市長選は市議が実働部隊になる。あと5人は擁立すべきだった」とため息をつく。ある県政与党幹部は「攻めの姿勢の自民などが議席を増やした。守りの姿勢に入ってしまった」と、票が割れることを避けた消極的な姿勢も敗因の一つとの認識を示した。
共産は現職7人を擁立し、「オール沖縄」を連呼する選挙戦を展開した。前回2017年の選挙では同様の戦略で議席を伸ばしたが、今回は現職2人を取りこぼす事態に。オール沖縄の中で、保守層の受け皿となってきた「にぬふぁぶし」は2人を擁立。城間市長も政治姿勢が近いことから選挙戦最終日に応援に入り、てこ入れを図ったが、現職の1人は落選し、勢力を後退させた。
自民県連幹部は「保守層の票が入っていないということだ。保革がまとまったかつての『オール沖縄』はもうない」と断言する。城間市長も12日、「(前知事の)翁長雄志さんが発した『オール沖縄』は腹八分、腹六分で間口を広げるという意味だと思うが、捉えられ方がだんだん変わってきている」と述べ、革新色が強まり、保守層が離れることに警戒感をにじませた。
オール沖縄内では今回の結果による衆院選や来年の県知事選への影響は限定的との認識が大半を占める。一方、今後のオール沖縄の在り方に危機感を示す声も漏れる。
県政与党関係者は、玉城デニー知事が新型コロナウイルス対策などを巡り、政権に追従する姿勢が目立つとの認識を示し、「必要があれば国と対峙(たいじ)する姿勢を知事が見せることが、再びオール沖縄の存在意義を復活させることにつながるのではないか」と語った。 (伊佐尚記、大嶺雅俊)
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那覇市議選は与党が議席を減らし、野党が躍進した。その背景と影響を探る。
▼那覇市議選、野党躍進19議席 与党は1減14議席「オール沖縄」に打撃