国の文化審議会(佐藤信会長)は16日、国指定重要無形文化財「琉球舞踊立方」(各個認定)保持者=人間国宝=に琉球舞踊真踊流の宮城幸子氏(87)=那覇市辻、名護市出身=と琉球舞踊重踊流の志田房子氏(本名・志田フサ子)(84)=東京都練馬区、那覇市出身=を認定するよう萩生田光一文部科学相に答申した。琉球舞踊の人間国宝誕生は初めて。琉球芸能の分野からの女性の認定も初となる。
沖縄県内の人間国宝は、これまで13人で(うち4人は物故により現在は解除)、芸能分野は8人認定されている。県内の芸能分野では現在、国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者の照喜名朝一氏と中村一雄氏、「組踊音楽歌三線」の城間德太郎氏と西江喜春氏、「組踊立方」の宮城能鳳氏、「組踊音楽太鼓」の比嘉聰氏の6人が活躍している。
「琉球舞踊」は、首里王府時代に士族の生活を題材に生まれた古典舞踊と、明治以後に庶民の生活風景から創作された雑踊に大別される。首里王府時代は、中国からの冊封使を歓待する御冠船踊(うかんしんうどぅい)の舞台で士族によって演じられ、明治以後は庶民を対象にした興業の形を取るようになった。琉球舞踊立方は、主に歌三線にのせて踊り、歌にある情景や人物の心情を表現する。
文化審議会は宮城氏について「琉球舞踊立方の伝統的な演技技法を高度に体現する舞踊家として重要な位置を占めている」「卓越した技量を示しているほか、後進の指導・育成にも尽力している」と答申した。志田氏については伝統的な演技技法の体現者であることに触れ「古典舞踊から雑踊まで幅広い芸域を保持して卓抜した技量を示している」とし、琉球舞踊の発展と継承に努めていると答申した。
人間国宝は例年、9~10月の官報告示をもって正式に認定される。1日現在、活動中の人間国宝の人数は東京(45人)、京都(12人)に次いで沖縄(9人)が、石川(9人)と並んで全国3番目になっている。
■略歴
みやぎ・ゆきこ 1933年、国頭郡羽地村(現名護市)生まれ。51年に琉球舞踊家の真境名佳子氏に師事。68年に宮城幸子琉舞道場を開設。74年に真境名氏より師範免許を授与される。96年県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者に認定。1999年より真踊流佳幸(しんようりゅう・よしゆき)の会会主。2009年に重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者になった。03年に県文化功労者、19年に県功労者。
しだ・ふさこ 1937年、那覇市生まれ。40年に琉球舞踊家の玉城盛重に師事。55年に玉城盛義より免許状取得。56年に舞踊研究所開設。65年に島袋光裕より免許状取得。91年芸術選奨文部大臣賞、96年県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者に認定され、2009年に重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者になる。04年県文化功労者。07年より重踊流(ちょうようりゅう)宗家。
■人間国宝とは
重要無形文化財に指定された芸能または工芸技術を高度に体現・体得している者として、国が文化財保護法に基づき認定した個人の通称。年1回、有識者でつくる国の文化審議会が答申し、文部科学相が認定する。死亡すると解除される。
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